強盗致傷罪と裁判員裁判

2021-07-19

強盗致傷罪と裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

Aさんは、コンビニで商品を万引きし、店外に出たところ、店員から「ずっと見てたぞ。警察行こうか」と声をかけられました。
捕まりたくないと感じたAさんはやにわに店員の顔面を殴打してその場から逃走しました。
通報を受けた警察は緊急手配を行い、Aさんはすぐに事後強盗罪で逮捕されてしまいました。
その後、店員が怪我していたことが判明し、Aさんは強盗致傷罪で起訴され、裁判員裁判として審理される予定です。
(フィクションです)

~万引きが重大な事件に~

事後強盗罪とは、窃盗犯人が、手に入れた物の取返しや逮捕などを免れるため、追跡してきた人に暴行・脅迫を加えたことで成立する犯罪で強盗罪の一種です。
万引きならば窃盗罪として10年以下の懲役ですが、事後強盗罪は5年以上の有期懲役と窃盗罪よりも格段に刑が重くなります。

事後強盗罪は、強盗罪の一種ですから、暴行・脅迫は追跡者、逮捕者の反抗を抑圧するに足りる程度のものでなければならないとされています。
また、判例は暴行・脅迫は「窃盗の現場」、又は少なくとも「窃盗の機会の継続中」になされることを要するとしています(最決昭和33年10月31日等)。

また、事後強盗の機会に、人を負傷させた場合は強盗致傷罪に問われる可能性があります。

刑法240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

なお、強盗致傷罪は結果的加重犯といって、犯罪の基本行為(強盗罪であれば暴行・脅迫)によって
・被害者が結果的に怪我した
・意図せずに被害者に怪我をさせた
という場合にも成立してしまう犯罪です。

Aさんは万引き、すなわち、窃盗事件を起こしたあと、捕まることをおそれて店員を殴打し、傷害を負わせていますから強盗致傷罪に問われています。

Aさんが店員を殴打しなければ窃盗事件として処理され、初犯であれば微罪処分(事件を警察限りで処理し、検察へ送致しない処分)により事件が終了したかもしれません。
仮に殴ったとしても、傷害を負わなかったり、負っても軽微で済んだのであれば、窃盗と暴行又は傷害として略式起訴により罰金で済んだかもしれません。
しかし、Aさんが店員を殴打し、重い傷害を負わせてしまったことにより、実刑判決を受ける可能性が濃厚となってしまいました。

~強盗致傷罪は裁判員裁判対象事件~

裁判員裁判とは、一般市民が裁判員として刑事裁判に参加し、被告人が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑にすべきかを裁判官と一緒に決める裁判制度のことをいいます。
裁判員裁判となる事件は、刑事裁判の中でも一定の重大事件だけです。
最も重い刑として死刑や無期懲役が定められている罪や、故意の犯罪行為で人を死亡させた罪に問われている事件です。
強制わいせつ致傷事件も裁判員裁判の対象となります。

裁判員は、裁判官と一緒に刑事事件の公判に出席します。
公判では、証拠として提出された物や書類を取り調べるほか、証人や被告人に対する質問も行われます。
そして、証拠に基づき、被告人が有罪か無罪かを検討し、決定します。
有罪とした場合には、被告人にどうような重さの刑罰を科すべきかについても判断します。
これらの判断は、裁判官3名と裁判員6名の合計9名で行なわれ、過半数の5名の意見が一致すれば決定となります。
ただし、被告人を有罪にする場合や、被告人に不利益な判断をする場合には、裁判官のうち少なくとも1名が加わっていなければなりません。

以上のように、裁判員裁判では、一般市民が裁判員となり、事実認定や刑の量定を決めることになります。
そのため、裁判員が十分に理解し納得するために、通常の裁判よりも分かり易く丁寧な説明を心がける必要があると言えます。

また、裁判員裁判では、実際の裁判が開かれる前に、公判前整理手続という手続きが行われます。
公判前整理手続とは、裁判員に実際に審理をしてもらう前に、裁判官・検察官・弁護人の三者により、本件事件の争点や、実際に裁判に提出する証拠を整理する手続きです。
このような手続きの中で、事件の争点や、重要な事実が整理され、裁判員には、最初から争点や判断の対象が提示されるようになっています。
公判前整理手続において、どの証拠を公判で取り調べるかが決定されます。
原則として、公判前整理手続において請求しなかった証拠を後日請求することはできません。
被告人に有利な証拠を提出することができないようなことのないよう、証拠開示の制度をうまく利用して、被告人に有利な証拠を検察官に開示させることが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門に扱っており、これまでも数多くの刑事事件を経験してきました。
刑事事件における豊富な経験や知識を活かし、裁判員裁判にもしっかりと対応し最善の弁護活動を行います。

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