前科について
福岡市早良区に住むAさん(21歳)は福岡市内の大学に通う大学生です。普段,大学には電車で通っています。ところが,ある日,Aさんは知人から,「大学の講義の終わりにフットサルの練習に参加しないか」と誘われました。Aさんは乗る気でしたが,大学から練習場までは遠く,公共の交通機関も不便で,友人はAさんよりも先に練習場に行っているというので,練習場まで行く脚がありませんでした。そこで,Aさんは,運転免許証を有していませんでしたが,親名義の車で練習場まで行くことに決めました。当日,Aさんは,親に無断で親名義の車を運転して大学へ向かって交差点を通過しようとしたところ,赤色信号を看過してしまいました。Aさんはパトロール中の警察官に呼び止められ運転免許証の呈示を求められましたが,無免許であったため呈示することができませんでした。そして,Aさんは,道路交通法違反(無免許運転の罪)の被疑者として検挙されてしまいました。その後,Aさんの母親も,車の引き取り等のため警察署へ呼ばれました。Aさんの母親は,もし息子に前科が付いたら就職に影響が出るのではないかと不安で一杯です。
(フィクションです)
~ はじめに ~
弊所に相談に来られる方の中にも
・前科が付くと就職できない?就職に不利になる?
・前科が付くとアパートの契約などができない?
・前科が周囲にばれることはある?
などという疑問,不安を持たれている方がおられます。そこで,今回は,「前科」が付く経緯を解説した上で,前科に関する様々な疑問に対しお答えします。
~ 前科が付くまでの流れ ~
前科が付くまでの流れは以下のとおりです。
検挙(OR逮捕)→ 捜査 → 起訴(正式,略式) → 裁判(正式,略式) → 「有罪」 → 確定 → 前科
以上をみてお分かりいただけたように,まず,前科は
① 逮捕されただけで付くものではありません
すなわち,裁判を受け
② 有罪であること
が確定してから付くものなのです。前科が付くとは,あくまでその罪に関し「有罪」であることが大前提です。逮捕段階では「推定無罪の原則」が働きますから,この時点で前科が付くことはないのです。
ちなみに,「確定」とは,
被告人側も検察側もその裁判についてこれ以上裁判で争えなくなった状態
のことをいいます。つまり,皆さんもご存知のとおり,被告人側,検察側にはそれぞれ,上級の裁判所に上訴する権限が与えられているのですが,その上訴期限が過ぎたり,あるいは上訴権を放棄するなどした場合は,その裁判につきそれ以上争えないという状態となります。そのときはじめて裁判が「確定」したという状態となるのです。
Q1 前科の情報はどこが把握しているの?
A1 検察庁の犯歴係(検察事務官)という係が把握しています。
Q2 前科は一般の人が知ることができるの? *
A2 できません。捜査のためとして警察,犯罪人名簿作成のためとして「市町村役場」に開示されることはあっても,その他の場合で開示されることはありません。
~ 前科に関するよくある疑問・質問 ~
ここからは前科に関するよくある疑問・質問についてお答えします。
Q3 前科が付くと就職できない?
A3 そんなことはありません。そもそも一般の企業が前科持ちであるかどうか調べようがありません。ただし,金融機関,警備会社など人の信用に関わる仕事や公安関係の仕事では調べられることがあるかもしれません。しかし,その場合であっても検察庁が回答することはありません。免許が必要な職(弁護士,税理士,看護師など)については欠格事由に当たることがあり,一定の制限を受けます。
Q4 前科が付くと契約(賃貸(アパート),金銭消費貸借(ローン)など)できない?
A4 ありません。これも相手方が,前科持ちであるかどうか調べようがないからです。契約に関しては,お金の支払に関する信用の問題ですから,前科持ちの方であっても,信用に何ら問題ない場合は特段支障はないと考えます。
Q5 前科が付くのを回避するにはどうしたらいいの?
A5 前科は上記の経過をたどりますから,まずは,「起訴自体を回避する」,つまり不起訴処分の獲得を目指すことが先決です。不起訴処分を獲得できれば前科が付くことはありません。
Q6 前科の情報は消えないの?消すことはできないの?
A6 残念ながら前科の情報が自動的に消えることはありませんし,消去するよう請求することもできません。つまり,一生ついて回ることになります。また,再犯を犯せば,前科が記録として残っていますから,その罪の裁判で不利になることが考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。前科が付くのを回避したいとお考えの方などは,まずは,土日・祝日24時間対応の弊所の無料相談をご利用ください。