統計で見る公然わいせつの検挙率,身柄率
会社員のAさんは,福岡県福津市内にある誰もいない公園のベンチに座っていた際,性欲を満たすために着ていたズボンから自己の陰茎を出したところ,たまたま近くを通りかかったVさんにその場面を見られてしまいました。その後,Aさんは自宅へ帰りましたが,通行人から福岡県宗像警察署に通報され逮捕されるかもしれないと不安になり,公然わいせつに詳しい弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)
~ 公然わいせつ罪(刑法174条) ~
公然わいせつ罪は刑法174条に規定されています。
刑法174条
公然とわいせつな行為をした者は,6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
= 公然 =
「公然」とは,不特定又は多数の者が認識することができる状態をいいます。現実に不特定又は多数の者に認識される必要はなく,その可能性があれば足りるとされています。したがって,公園や道路に,仮に誰もいなかったとしても,いつ不特定の者である通行人の目に触れるとも限りませんから,公園や道路は公然性が認められる場所です。また,屋内や車内であっても,容易に第三者の目に触れるような場所であれば公然性は認められます。
= わいせつな行為 =
判例によれば,「わいせつな行為」とは,行為者又はその他の者の性欲を刺激興奮又は満足させる行為であって,普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するものをいうとされています。性器の露出はその典型ですが,衣服を着用していても性的部位を殊更に強調する衣服を着用したまま公共の場所を歩くといった行為も「わいせつな行為」に含まれることがあります。
~ 公然わいせつ罪の検挙率は? ~
平成30年版犯罪白書によると,平成29年の公然わいせつ罪の「事件認知件数」は
2721件
でした。平成26年の「3143件」をピークに減少傾向にあるものの,平成初期が1000件代で推移していたことに比べれば依然として高い数字といます。
次に,平成29年の公然わいせつ罪の「事件検挙件数」は
1723件
でした。
よって,平成29年の公然わいせつ罪の「検挙率」は
1723÷2721= 約63%
ということになります。
~ 公然わいせつ罪の身柄率は? ~
ここで,身柄率とは,平成29年内に①検察庁で処理した件数のうち,②逮捕され,検察官の元へ身柄送致された件数(逮捕期間中に釈放された件数は含まない)の割合のことを意味します。平成30年版犯罪白書によれば,平成29年の公然わいせつ,わいせつ物頒布等罪の「身柄率(②÷①)」は
32.7%
でした。
同じ性犯罪の中でも強制わいせつ罪の身柄率が「63.5%」,強制性交等罪の身柄率が「58.2%」に比べると,公然わいせつ罪等の身柄率は「低い」ことが分かります。このことは,
公然わいせつ罪で検挙されても,逮捕されないか,あるいは逮捕されたとしても逮捕期間中に釈放される可能性が比較的高い
ことを意味しています。しかし,まったく逮捕されないという保証はありませんので安心はできません。
~ その他 ~
その他,逮捕され,検察官の元へ送致された後はどうなのでしょうか?
この点につき,平成30年版犯罪白書によれば,平成29年の公然わいせつ,わいせつ物頒布等罪における①逮捕されたまま検察官の元へ送致された件数のうち,②検察官が勾留請求した件数の割合(「勾留請求率(②÷①)」)は,
76.4%
でした。
他の刑法犯が軒並み,90%代,あるいはそれに近い数字をたたき出しているのに対し,公然わいせつ罪等の「勾留請求率」は比較的「低い」ことが分かります。このことは,
他の刑法犯に比べて,検察官の判断で逮捕された方を釈放している割合が比較的高い
ことを意味しています。
しかし,76.4%という数字も決して低い数字ではありません。なお,勾留請求された件数のうち,勾留請求が認容された件数が
516件
却下された件数が
74件
でしたので,
勾留請求されてしまえば,比較的高い確率で勾留(10日間の身柄拘束)されてしまうことが分かります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,公然わいせつ罪をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。公然わいせつ罪やその他の刑事事件でお困りの方は,0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間,無料法律相談,初回接見サービスを受け付けております。