少年事件

1 少年事件

まず、少年事件の対象となるのは、①14歳以上の罪を犯した少年(犯罪少年)、②14歳未満の刑罰法令に触れる行為をした少年(触法少年)、③将来罪を犯すおそれのある少年(ぐ犯少年)です。

そして、少年法1条には次のようなことが書かれています。

「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う・・・ことを目的とする」

つまり、過ちを犯した少年に対しては成人のように刑罰ではなく、健全な成長・発達を促す働きかけが必要であるという考え方がとられています。

これに伴い、少年事件においては、手続きにおいて成人とは異なる進行がなされます。

2.①14歳以上の罪を犯した少年(犯罪少年)

(1)犯罪少年の流れ

捜査段階では、被疑者が少年の場合でも、基本的には刑事訴訟法が適用されます。

よって、少年事件であっても、捜査段階では、弁護士は弁護人として、基本的には成人の刑事事件と同様の活動をすることとなります。

もっとも、少年の被疑事実について捜査を遂げた結果、家庭裁判所の審判に付すべ事由がある場合には、すべての事件を家庭裁判所に送致することを義務付けています(全件送致主義)。

この点で、不起訴処分の制度がある成人の手続きと大きく異なります。

そして、家庭裁判所に送致する際、逮捕され検察官に送致されたときに勾留(最大20日間)または勾留に代わる観護措置(最大10日間)によって身柄を拘束されていた少年は、観護措置の決定がされたとみなされ(「みなし観護措置」といいます)、家庭裁判所送致後も引続き身体拘束されます。

観護措置とは、一般的に少年鑑別所に送致することをいいます。

少年鑑別所は少年の心身の状態を医学・心理学・教育学などの科学的方法を用いて調査・診断を行い、非行の原因を解明して処遇方針を立てるための施設です。

観護措置の決定により少年鑑別所へ収容された場合、通常4週間、収容されます。

一方、観護措置をとらない場合には、在宅のまま調査、審判が行われます。

家庭裁判所は、受理した少年保護事件につき、不処分決定もしくは試験観察(処分決定を一定期間猶予する中間的措置)、または保護観察少年院送致児童自立支援施設・児童養護施設となる保護処分決定、または検察官への送致決定のいずれかの決定を出します。

上記のように、少年事件では成人と異なり身体拘束期間が長期化するという特徴があります。

早い段階から弁護士(付添人)をつけて、身体拘束解放活動及びより軽い処分に向けて審判準備(特に「環境調整」)をしておく必要性があります。

「犯罪少年」)の手続きの流れ

(2)具体的な弁護活動

①家庭裁判所送致前
●「勾留請求前」
→検察官と面会したり、意見書などを提出したりして、勾留請求しないように働きかけを行います。

●「勾留請求後」
→裁判官に対し勾留決定しないように「勾留請求却下を求める意見書の提出」や勾留決定がなされた場合には「勾留決定に対する準抗告申立」を行います。

●「家裁送致に向けた準備」
→少年の保護者(家庭)、学校、職場等の関係者への働きかけ等、環境調整活動への着手を行います。

②家庭裁判所送致後の活動
●観護措置(少年鑑別所送致)回避のための活動
→観護措置の期間は実務上4週間となるのが通常です。そのため、留年や退学、就労者にとっては解雇といった事態が生じえます。そこで、観護措置を回避すべく活動を行います。

●観護措置決定後の身柄の解放
→仮に観護措置決定がなされた場合には、かかる決定に対し不服の申立て(異議申立て、観護措置の取消申立て)を行います。特に、定期試験や就職試験を控えている場合等、将来のキャリア形成にかかわる事情がある場合には、観護措置の(一時)取消しの申立てを行い、その期間のみ身体拘束を解放してもらえるよう申立てを行います。

●審判準備
→少しでも軽い処分(例えば「不処分決定」「保護観察」等)になるように活動します。

また、重い処分が見込まれる場合にも、直ちに処分を決めずに、一定期間家庭裁判所調査官に少年の行動を観察させて、その経過を見た上で処分を決める「試験観察」の途を提案し、最終的に軽い処分となるよう活動します。

なお、少年審判は、少年に非行事実の有無及び要保護性があったかどうかを判断し、少年の抱えている問題点に応じた処分を選択するための手続きです。

要保護性とは、①再非行の可能性、②保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険性を除去できる可能性、③保護処分による保護がもっとも有効かつ適切な処遇であることが認められることをいいます。

要保護性が審判の対象とされることにより、たとえ非行事実が軽微であっても要保護性が高い場合には少年院送致のような重い保護処分に付されることがあります。

ですから、軽微な事案であったからといって軽い処分になると安心はできません。

要保護性の解消に向けた活動(環境調整)を積極的に行う必要があります。

(3)少年審判の処分

家庭裁判所が少年に対して行う処分は,非行を犯した少年を改善・更生させて,再び社会に迷惑をかけることのないようにすることを目的としています。

具体的には、少年を保護観察所の指導や監督にゆだねたり(保護観察)、少年院で指導や訓練を受けさせたり(少年院送致)、開放的な施設での生活指導(児童自立支援施設・児童養護施設送致)を行ったり、少年に刑罰を科すことが適当なときは、事件を検察官に送って刑事裁判を受けさせる場合もあります(検察官送致)

一方、少年の更生が見込まれるときには,このような処分をしない場合もあります(不処分決定)

(4)検察官送致(逆送)

調査の結果、本人が20歳以上であることが判明したときや、死刑、懲役、禁錮に当たる罪の事件について、その罪質・情状に照らし刑事処分相当と認めるときは、検察官送致(逆送)されます。

なお、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯すときに16歳以上の少年に係るものについては、原則逆送決定がなされます。

さらに、令和4年4月1日施行の改正少年法により、18歳、19歳の少年は「特定少年」とされ、

18歳以上の少年のとき犯した死刑,無期又は短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件についても、原則逆送決定がなされます。

検察官送致(逆送)された場合、成人の刑事事件と同様の手続きの流れにのります。

勾留期間は、逆送の日から起算されるので、逆送の日から10日間勾留されることになり、勾留期間が延長されると、さらに10日間身柄拘束を受け続けることになります(ただし、観護措置決定前に、同一事件について勾留されていた場合には、勾留期間の延長は認められません)。

そして、起訴されれば、成人と同じ手続きで刑事裁判が行われることになり、これが裁判員裁判対象事件であれば裁判員裁判が行われます。

令和4年4月1日施行の改正少年法により、特定少年が起訴された場合は、その特定少年の実名や顔写真を報道することが可能になります。

3.②14歳未満の刑罰法令に触れる行為をした少年(触法少年)

刑法上、14歳に満たない者の行為は罰しないとされています。

しかし、少年法では、14歳未満の刑事未成年者であっても、刑罰法令に触れる行為があった場合所定の処分がなされることとなります。

なお、触法少年に関しては、調査・処遇は原則として児童福祉機関による措置にゆだね、児童福祉機関が相当と認めた場合にのみ家裁に送致し、その場合にのみ家裁は審判に付することができるという「児童福祉機関先議」の原則がとられています。

触法少年の場合、一般的には児童相談所自らが措置(福祉的措置)をとる場合が多く、「児童または保護者への訓戒・誓約書の提出」「児童福祉士等の指導」「児童福祉施設入所措置」があります。

なお、一定の重大事件等に関しては児童相談所長から家庭裁判所に送致されますが、送致後の手続きは犯罪少年と同様です。

4.③将来罪を犯すおそれのある少年(ぐ犯少年)

少年法3条1項3号に定められている一定の事由があって、その性格または環境に照らして、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれ、すなわち「ぐ犯(虞犯)性」のある少年のことをいいます。

ぐ犯事由としては、

① 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
② 正当の理由がなく家庭に寄り付かないこと
③ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、またはいかがわしい場所に出入りすること
④ 自己または他人の徳性を害する行為をする性癖のあること

です。

ぐ犯は犯罪とまではいえないもので、成人であれば処罰の対象にならない行為です。

少年の健全な育成を図るとともに、犯罪の発生を未然に防止しようという考えから、ぐ犯事件についても審判の対象とされています。

典型例としては、「保護環境に重大な問題のある少年が家出をして風俗でアルバイトしたりしているさなか補導されること」等が挙げられます。

14歳未満のぐ犯少年については、触法少年と同様の流れになりますが、14歳以上18歳未満のぐ犯少年については、警察官または保護者が少年を家庭裁判所に送致すべきか、児童相談所に通告すべきか判断することになります。

また、18歳以上のぐ犯少年については、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料される場合、家庭裁判所に送致されます。

なお、ぐ犯事件の観護措置比率は70%を超えています。

ぐ犯事件は軽微事案だといって安心はできません。

施設収容処分を避けるためにも、早期の環境調整等の対応が必要となります。

~少年事件の弁護活動のポイント~

少年事件は、成人の刑事事件と比べ、少年の保護・改善のため特別な制度となっている部分も多くあります。

少年事件でお悩みの場合には、すぐに弁護士へ相談し、少年のいる環境の改善など適切な措置を講ずることが重要となっていきます。

弁護士は、家庭裁判所へ送致された後も、付添人として、少年に最適な処遇がされるよう活動を行います。

そして、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部では、少年事件を専門に取り扱う弁護士が、直接「無料相談」を行います。

被疑者が逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています

少年事件でお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士にご相談ください。

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