【窃盗】置引き窃盗と早期釈放
置引き窃盗と早期釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡市中央区の大学に通うAさん(20歳)は、ATM機でお金を引き出そうとしたところ、ATM機横に財布が置かれてあるのを見つけました。Aさんはそれを手に取って中身を見ると、財布の中には1万円札1枚が入っているのを確認しました。Aさんは、普段お金に足りないことに不満を抱いていたことから、「自分のものにしてしまえ」と思って財布の中から1万円札を抜き取りました。その後、ATM機の上に財布を置き忘れたことに気づいたVさんが、その約5分後ATM機の元へ戻ってきました。Vさんは、財布は無事手に戻すことができたものの、1万円札を抜き取られたことに気づいたことから警察に通報、被害届を提出しました。そうしたところ、Aさんは窃盗罪で福岡県中央警察署に逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~置引き~
置引きとは、置いてある他人の財物を持ち去る行為をいいます。
置引きは、刑法などの法令に規定されている罪名ではなく、「ひっったくり」や「万引き」と同様、窃盗罪の態様として慣用的に使われている言葉の一種です。
なお、平成30年度版犯罪白書によれば、置引きは、万引き、車上狙い(荒らし)に次ぐ3番目に多い窃盗の手口とされています。
置引きは窃盗罪(刑法235条)あるいは占有離脱物横領罪(刑法254条)に当たる可能性があります。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
窃盗罪は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、占有離脱物横領罪は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」と両罪は法定刑に大きな違いがあります。
窃盗罪と占有離脱物横領罪を区別する基準は、被害者の財物に対する支配が及んでいるか否かという点です。及んでいる場合は窃盗罪、及んでいない場合は占有離脱物横領罪が成立します。
本件では、VさんがATM機に財布を置き忘れたことに気づき約5分後に取りに戻ったというのですから、Vさんの財布及びその中の財物(お金など)に対する支配は認められるものと思います。したがって、Aさんには窃盗罪が適用され、処罰される可能性が高いでしょう。
~逮捕後の流れと早期釈放~
逮捕後の流れは以下の通りです。
①逮捕→②警察署の留置施設へ収容→③警察官の弁解録取→④送検→⑤検察官の弁解録取→⑥勾留請求→⑦裁判官の勾留質問→⑧勾留決定
警察官に①逮捕されると、警察署内にある②留置施設(留置場)へ収容されます。
その後、③警察署で弁解録取という手続きを受けます。その上で釈放される場合もありますが、釈放されない場合は、①逮捕から48時間以内に④検察官の元に送致する手続き(送検)を取られます。
検察官の元でも⑤弁解録取の手続きを受けます。その上で釈放される場合もありますが、釈放されない場合は⑥勾留請求されます。勾留請求は、検察官の元に送致される手続きが取られてから24時間以内になされます。
勾留請求されると、今後は、⑦裁判官による勾留質問という手続きを受けます。その上で釈放される場合もありますが、釈放されない場合は⑧勾留決定が出されたと考えていいでしょう。勾留決定が出た場合は「勾留状」という裁判官名義の令状が発布され、勾留状に基づき指定の留置場等へ収容されます。
①から⑧までの手続きに要する時間はおおよそ3日間ですから、早期釈放というのは通常①から⑧までの間で釈放されることをいいます。
警察官、検察官、裁判官の判断で釈放されることもありますが、そこに弁護人の働きかけがあればより釈放される可能性を高めることができます。
早期釈放をお望みの場合は弁護士まではやめにご連絡ください。
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