【事例解説】性的姿態等撮影未遂罪とその弁護活動(女子中学生の背後から衣服の中を撮影しようとしたケース)

【事例解説】性的姿態等撮影未遂罪とその弁護活動(女子中学生の背後から衣服の中を撮影しようとしたケース)

今回は、商業施設内で女子中学生のショートパンツの中を撮影しようとしたというニュース記事を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。

事例:女子中学生の背後から衣服の中を撮影しようとしたケース

福岡市東区の商業施設で、女子中学生Aさんのショートパンツの中を撮影しようとしたとして自称アルバイトのAさんが逮捕されました。
性的姿態等撮影の疑いで逮捕されたのは、福岡市東区の自称アルバイトAさんです。
Aさんは、福岡市東区の商業施設内の書店で、本を読んでいたVさんのショートパンツの中を撮影しようとした疑いがもたれています。
警察によりますと、保安員がスマートフォンを持って店内を徘徊するAさんを発見。
不審に思い、監視を続けていたところ、AさんがVさんの背後から、履いていたショートパンツの中に、スマートフォンを差し込んだため、警察に通報しました。
Aさんはそのまま店から立ち去りましたが、乗っていたバイクのナンバーの解析や防犯カメラなどの捜査から関与が浮上。警察官がAさんの自宅に向かい、事情を聴いていたところ、盗撮を認めたということです。
取り調べに対し、Aさんは容疑を認めたうえで「性的欲求を満たすため」などと話しているということです。
(事例はフィクションです。)

1,性的姿態等撮影罪について

〈性的姿態等撮影罪〉

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の映像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下「性的姿態撮影等処罰法」と言います。)
2条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
1号 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
 イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治40年法律第45号)第177条第1項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
2号 刑法第百176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
3号 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
4号 正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2項 前項の罪の未遂は、罰する。
3項 前2項の規定は、刑法第176条及び第179条第1項の規定の適用を妨げない。

いわゆる盗撮行為については、これまでも各都道府県が定める迷惑防止条例などにより処罰の対象となっていました。
しかし、迷惑防止条例は、都道府県ごとに処罰対象が異なるなど、必ずしもこれらの条例などでは対応しきれない場合もありました。
そこで、そのような場合に対応するために、2023年7月13日に性的姿態撮影等処罰法が施行され、性的姿態等撮影罪を設けることで盗撮行為を厳罰化し、都道府県ごとに処罰対象が異なるといった状態も解消されることになりました。
性的姿態等撮影罪は、正当な理由がないのに、ひそかに、人の性的な姿態を撮影した場合に成立します。
正当な理由」とは、例えば、医師が救急搬送された意識不明の患者の上半身裸の姿を医療行為上のルールに従って撮影する場合などが、これに該当すると考えられます。
また、「ひそかに」とは、撮影される者の意思に反して自分の性的な姿態等を撮影されることを言います。
被害者が13歳以上16歳未満の者で、加害者が20歳未満の場合、加害者が被害者よりも5歳以上年長である場合に、正当な理由なく性的な姿態等を撮影すれば性的姿態等撮影罪が成立します。
被害者が13歳から15歳の場合、加害者が18歳から20歳の場合が問題となります。
例えば、18歳のXさんが、15歳のYさんの性的な姿態等を撮影すれば、Yさんは16歳未満ですが、年齢差が5歳未満であるため、性的姿態等撮影罪は成立せず、処罰の対象外となります。
なぜ、被害者が13歳以上16歳未満の場合には、年齢差が5歳以上年長の者の行為しか処罰されないのかについて、13歳以上16歳未満の者は、相手との関係が対等でなければ性的姿態等を撮影されることについて自由な意思決定が難しくなると考えられているからです。
どのような場合に相手との関係が対等でなくなるのかについて、一般的に、相手との年齢差が大きくなればなるほど、社会経験等の差から対等ではなくなると考えられます。
また、性的姿態等撮影罪には未遂を処罰する規定があることから、正当な理由がないのに、ひそかに、性的な姿態等を撮影する行為を行えば、結果として性的な姿態等が撮影されていなくても、未遂として処罰されることになります。
上記の事例で言えば、Aさんは、正当な理由がないのに、Vさんの意思に反して(「ひそかに」)、Vさんのショートパンツの中(「人が身に着けている下着のうち現に性的な部分を直接若しくは間接に覆っている部分」)に、スマートフォンを差し込んだ時点で、実際にスマートフォンにVさんのショートパンツの中が撮影されたデータ等が残っていなくても、性的姿態等撮影未遂罪が成立することになります。
なお、被害者が18歳未満の場合に、自己の性的好奇心を満たす目的で、被害者を撮影する行為は、児童ポルノ製造罪児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項)が成立し、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。

2,身柄拘束回避・解放、不起訴処分獲得に向けた弁護活動

性的姿態等撮影未遂罪で逮捕された場合は、最長で72時間身柄を拘束されることになります。
そして、72時間を超えて、検察官がさらに身柄を拘束する必要があると判断した場合、裁判所に対して逮捕よりも長期の身柄拘束である勾留を請求します。(刑事訴訟法205条1項
勾留による身柄拘束は、原則として10日間、さらに10日を超えない範囲で延長することが認められているので、最長で20日間、身柄を拘束されることになります。(刑事訴訟法208条
被疑者に対して勾留が認められるのは、勾留の理由や勾留の必要性があると判断された場合です。
勾留の理由は、被疑者が定まった住居を有しない、被疑者による証拠隠滅または逃亡のおそれがあると判断された場合に認められることになります。(刑事訴訟法207条1項本文60条1項各号
勾留の必要性は、被疑者の身柄を拘束しなければならない必要性と、身柄拘束によって被疑者が受ける不利益とを比較して、勾留することが相当と言えるかにより判断されます。
そこで、身柄拘束回避のための弁護活動としては、勾留の理由や必要性を否定し得る客観的な事情や証拠の収集の活動を行います。
例えば、被疑者が家族と同居していて、同居している家族が身元引受人となり被疑者を監督するという事情があれば、住居不定と逃亡のおそれを否定し得る客観的な事情になります。
また、上記の事例のように、盗撮行為に使ったスマートフォンが既に捜査機関に押収されていれば、被疑者による証拠隠滅のおそれを否定できると言えるでしょう。
それらの事情が存在しても検察官の勾留請求が認められ、被疑者が勾留されてしまった場合には、身柄拘束からの解放に向けた弁護活動を行います。
まず、被疑者がいかなる理由に基づいて勾留されてしまったのかを知るために、勾留理由の開示請求を行います。(刑事訴訟法207条1項本文82条~86条
そして、理由が明確になれば、前述のようなそれらの理由を否定し得る客観的な事情や証拠の収集や主張をしていくことで、身柄拘束からの早期解放を目指します。
性的姿態等撮影罪は、被害者が存在する犯罪でもあります。
そこで、弁護士は、加害者に代わって被害者との示談交渉を行います。
示談交渉は事件の当事者同士でもすることはできますが、当事者同士での示談交渉はあまりうまくいかないことが多いです。
特に、性的姿態等撮影罪のような性犯罪の場合、被害者側は加害者側に対して自分の連絡先を知らせたくないと考えるのが一般的であることから、加害者が被害者とコンタクトをとることは難しいと言えます。
しかし、弁護士を間に入れることで、被害者の方に安心して頂き、加害者の立場から被害者に対して謝罪・反省の意思を伝えたり、被害弁償等を行うことができれば示談の成立に対して十分な期待が持てると言えます。
そして、示談と言っても加害者側に一方的に都合のいい内容での示談を成立させることは難しく、被害者側の意向をくみ取りつつ、宥恕条項(加害者を許し刑事処罰を望まないことを意味する条項)や被害届の取下げや刑事告訴の取消等の約定を加えた内容での示談を成立させることが肝要です。
また、示談が成立していれば、被疑者による証拠隠滅や逃亡のおそれは低いと判断され、早期の身柄解放や、起訴猶予による不起訴処分の獲得も期待できます。
以上より、性的姿態等撮影罪で逮捕されてしまった場合には、少しでも早く弁護士に依頼することをオススメです。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において性的姿態等撮影罪で逮捕等により身柄を拘束されてしまった、あるいは性的姿態等撮影罪で在宅で捜査を受けている方など、性的姿態等撮影罪でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、刑事事件・少年事件に対する豊富な経験や実績がございます。
ご家族等が性的姿態等撮影罪で身柄を拘束されている方に対しては初回接見サービス(有料)を、性的姿態等撮影罪で在宅事件として捜査を受けている等の方に対しては初回無料でご利用いただける法律相談を、それぞれご提供しております。
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