リベンジポルノで告訴取下げ
福岡県豊前市に住むAさんは,長年交際していたVさんから別れ話を切り出されました。Aさんは,Vさんと寄りを戻そうと,Vさんに何度も説得を試みましたがVさんの気持ちが変わることはありませんでした。そこで,Aさんは,交際時に密かに撮影し,自宅のパソコンに保存していたVさんとの性交時の動画データ(顔などからVさんと分かるもの)を,ツイッター上に複数回に渡り投稿しました。この事実を知ったVさんは,福岡県豊前警察署に告訴状を提出しました。そして,後日,Aさんは豊前警察署から呼び出しを受けました。今後のことが不安になったAさんは,リベンジポルノに詳しい弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)
~ リベンジポルノ被害防止法 ~
リベンジポルノ被害防止法は,正式名称「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(以下,法律)」といいます。
= 私事性的画像記録(リベンジポルノ)とは =
「私事性的画像記録(リベンジポルノ)」とは,法律2条1項各号に掲げられた撮影対象者(Vさん)の姿態(姿など)が撮影された画像に係る電磁的記録その他の記録をいいます(ただし,撮影対象者が,第三者がそれを閲覧することを認識した上で,任意に撮影を承諾し又は撮影したものは除きます)。
●法律2条1項各号
1号 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
2号 他人が人の性器等(性器,肛門又は乳首をいう)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
3号 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって,殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部,臀部又は胸部をいう)が露出され又は強調されているもの であり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するもの
●電磁的記録その他の記録
画像・動画データなどを指します。「画像に係る電磁的記録」とありますから,音声データは含まれません。
●但書
撮影対象者が,第三者がそれを閲覧することを認識した上で,任意に撮影を承諾し又は撮影したものは除かれます。つまり,グラビアの画像データは「私事性的画像記録」には当たりません。
●本件では?
性交時のVさんの姿態は法律2条1項1号に当たりますし,電磁的記録である動画データにその姿態が記録されています。また,Aさんはひそかにこの動画データを撮影していたということですから,Vさんが撮影に承諾していたものとは考えられません。
したがって,本件動画データは「私事性的画像記録(リベンジポルノ)」に当たり得ます。
= どんな行為が処罰されるのか?罰則は? =
私事性的画像記録(リベンジポルノ)について,どんな行為が罰せられるのか,どんな罰則が設けられているかについては法律3条に規定があります。
●公表罪(法律3条1項)
行為:第三者が撮影対象者を特定することができる方法で,私事性的画像記録(リベンジポルノ)を不特定又は多数の者に提供すること
→「第三者が撮影対象者を特定することができる方法」での提供が必要ですがので,本人しかわからないというのでは公表罪は成立しません。また,「提供」とありますが,その概念は広く,LINEグループに送信する,FacebookやTwitterなどのSNSに投稿する行為も「提供」に当たります。
罰則:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
●公表目的提供罪(法律3条3項)
行為:法律3条1項の行為をさせる目的で,私事性的画像記録(リベンジポルノ)を提供すること
→たとえば,知人に拡散させる目的で,その知人に私事性的画像記録(リベンジポルノ)をLINEなどで送信することなどがあります。上記と異なり,「不特定又は多数の者」との文言がありませんから,本項では特定人から特定人への「提供」行為が処罰の対象となります。
罰則:1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
●本件では?
Aさんの行為は法律3条1項の公表罪に当たるでしょう。
~ 公表罪も公表目的提供罪も親告罪 ~
公表罪も公表目的提供罪も,被害者の告訴がなければ公訴を提起できない(起訴できない)親告罪です。したがって,既に捜査機関に告訴状が提出されている場合でも,被害者が公訴提起前に告訴を取消せば,刑事処分は必然的に「不起訴」となります。被害者に告訴を取消していただくには,まずは真摯に謝罪し,示談交渉をはじめることが有用です。また,既に拡散してしまった画像データをどう消去するのかなどといった点も大切となるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,リベンジポルノ事案をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。お困りの方は,まずはお気軽に0120-631-881までご連絡ください。24時間,無料法律相談,初回接見サービスを受け付けております。