麻薬及び向精神薬取締法違反

1.麻薬及び向精神薬取締法違反について

薬物の全般を規制している一般法は存在せず、それぞれの薬物の種類ごとに法律が制定され、取り締まられています。

麻薬及び向精神薬に関しては、「麻薬及び向精神薬取締法」において規制されています。

具体的には、ヘロイン、コカイン、THC、LSD、MDMAなどです。

国際的には、LSDやMDMAのような幻覚剤の多くは、向精神薬と認識されていますが、日本の法律上は、麻薬として扱われています。

また、向精神薬とは、精神に作用する薬物の総称であり、非常に広い意味を有する用語ですが、規制の対象となるのは麻薬の場合と同じく、麻薬及び向精神薬取締法の別表で指定されている薬物となっています。

2.麻薬及び向精神薬の作用等

(1)麻薬

①ヘロイン・モルヒネ

性状:白色結晶性粉末
用法:注射・吸引・吸煙
薬理作用:鎮静・鎮痛、強力な陶酔感をもたらす
依存性等:強力な身体的・精神的依存を形成。休薬により激しい禁断症状を出現
起源:けし(東南アジア、中近東)⇒窃取⇒あへん抽出⇒モルヒネ⇒化学反応⇒ヘロイン

②ペチジン

性状:白色結晶性粉末
用法:注射
薬理作用:鎮静、鎮痛
依存性等:強力な身体的・精神的依存を形成。休薬により激しい禁断症状を出現
起源:化学合成

③コカイン・クラック

性状:白色結晶性粉末
用法:注射、吸入、吸煙
薬理作用:中枢神経、気分高揚、陶酔感、局所麻酔
依存性等:強力な精神的依存を形成。妄想型の精神病様症状を発現
起源:コカ(南米)⇒コカ葉採取⇒抽出⇒コカイン

④LSD(リゼルギン酸ジエチルアミド)

性状:白色結晶上粉末(錠剤、ペーパー等)
用法:幻覚、知覚変化をきたす
依存性等:精神的依存を形成。分裂病様症状をきたす。
起源:麦角菌(らい麦に寄生)⇒抽出⇒リゼルギン酸⇒化学反応⇒LSD

⑤MDMA(メチレンジオキシタメタンフェタミン)

性状:白色結晶性粉末(錠剤)
用法:経口
薬理作用:中枢興奮、気分高揚、美的認識感の高まり
依存性等:精神的依存を形成
起源:化学合成

(2)向精神薬

①トリアゾラム

性状:白色結晶性粉末(錠剤)
用法:経口
薬理作用:催眠
依存性等:身体的・精神的依存を形成
起源:化学合成

②ニトラゼパム

性状:淡黄色結晶性粉末
用法:経口
薬理作用:催眠
依存性等:身体的・精神的依存を形成
起源:化学合成

③ジアゼパム

性状:白色結晶性粉末
用法:経口
薬理作用:精神安定
依存性等:身体的・精神的依存を形成
起源:化学合成

④ペンタゾシン

性状:白色結晶性粉末
用法:注射
薬理作用:鎮痛
依存性等:身体的・精神的依存を形成
起源:化学合成

⑤メチルフェニデート

性状:白色結晶性粉末
用法:経口
薬理作用:中枢興奮
依存性等:精神的依存を形成
起源:化学合成

3.刑罰

(1) ジアセチルモルヒネ(EX.ヘロイン等)

(ア) 輸入・輸出・製造

① 単純(営利目的以外)
1年以上の有期懲役

② 営利目的
無期若しくは3年以上の懲役又は情状により1000万円以下の罰金併科

(イ) 所持・譲渡・譲受

① 単純(営利目的以外)
10年以下の懲役

② 営利目的
1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科

(ウ) 施用・使用

① 単純(営利目的以外)
10年以下の懲役

② 営利目的
1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科

(2)ジアセチルモルヒネ以外(EX.コカイン、LSD・MDMA、マジックマッシュルーム等)

(ア) 輸入・輸出・製造

① 単純(営利目的以外)
1年以上10年以下の懲役

② 営利目的
1年以上の有期懲役又は情状により500万円以下の罰金併科

(イ) 所持・譲渡・譲受

① 単純(営利目的以外)
7年以下の懲役

② 営利目的
1年以上10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科

(ウ) 施用・使用

① 単純(営利目的以外)
7年以下の懲役

② 営利目的
1年以上10年以下の懲役又は情状により300万円以下の罰金併科

(3) 向精神薬(抗うつ剤等)

(ア) 輸入・輸出・製造

① 単純(営利目的以外)
5年以下の懲役

② 営利目的
7年以下の懲役又は情状により200万円以下の罰金併科

(イ) 譲渡及び譲渡目的所持

① 単純(営利目的以外)
3年以下の懲役

② 営利目的
5以下の懲役又は情状により100万円以下の罰金併科

4.具体的検討

(1)薬物からの離脱のための方策

特に麻薬は使用した時の快感を再び求めたいという欲求や、麻薬の効果が切れたときの疲労感、倦怠感から逃れたいとの欲求が強いことから、繰り返し使用してしまうことが多い(精神的依存症)です。

薬物事犯においては、依存症となって使用をやめられないことが多々あり、治療やカウンセリングにつなげ、薬物を止められる環境を作ることが大切です。

カウンセリングには、精神科医や臨床心理士等の専門家によるカウンセリングも考えられます。

また、薬物依存リハビリテーションセンター(例えばDARC)等に通うことも有益です。更に、専門の治療医院に入・通院することも挙げられます。

例えば、早い段階から弁護士をつけて、身体拘束開放活動(保釈)を行い、保釈中から治療を始めることは非常に有益です。

(2)量刑上の考慮要素

よく問題となる使用罪に関しては、使用量、使用回数、使用期間、使用方法を判断の事情とし、薬剤への依存程度を加味して量刑の判断とします。

なお、麻薬・向精神薬が高値で取引されていることに鑑み、営利目的で禁止行為を行うと罪が加重されます。

~麻薬取締法違反に関する弁護活動~

(1)情状弁護

犯行を認めて反省の態度を示していること、使用・所持の量が微量であること、薬物使用の常習性・依存性がないこと、家族などの監督により再犯可能性がないこと等を積極的にアピールしてゆき少しでも軽い処分を目指します。

また、薬物犯罪については、専門家等の医療機関を利用することで治療につなげることも重要です。

覚せい剤は依存性の高い薬物なので、再犯を防止するためには、個人の努力のみならず、家族や専門機関を含めた周囲からのサポート体制があることも有利な事情になります。

(2)争いのある事件

たとえば中身を知らされず運ばされた場合のように、違法な物とは知らずに行った行為で検挙されることが考えられます。

違法性の認識については、それが麻薬であるという認識までは要求されず、違法な薬物であるという程度の認識で足りるとされているため、知らなかったという弁解はなかなか通用しませんが、本当に知らなかったような場合には、犯罪が成立しないのですから、客観的な状況をもとに無実であることをしっかりと主張する必要があります。

また、捜査過程に違法があれば、それをもとに証拠採用について争うことにより有利な結果を得ることができる可能性も広がります。

(3)身柄解放活動

逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。

そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡のおそれがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。

また、仮に身体拘束(逮捕・勾留)がなされても、前述の示談活動及び取調対応を適切にとることで解放されやすくなります。

弁護士による適切なアドバイスを受けることにより、身体拘束解放に向けて大きく前進することができます。

(4)裁判員裁判について

ヘロインの営利目的の輸出・輸入・製造の場合には、裁判員裁判対象事件となります。

裁判員裁判では、連日の集中審理が行われますので、そのために入念な事前準備が必要となります。

弁護士としては、公判前整理手続きの中で、積極的に証拠の開示を求めるとともに、弁護側からの主張を立て、何処が争点となるのかをしっかりと把握したうえで、公判での訴訟活動に向けた準備を行う必要があります。

裁判員裁判では、集中した審理を行うために、公判までに膨大な資料を精査し、何が有利な証拠となるのかを見極めたうえで、しっかりとした主張構造を整える必要があります。

裁判員裁判において、充実した弁護を行うためには、高い弁護技術が求められます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門に扱っており、数多くの刑事事件の経験を基に、裁判員裁判についてもお力になれるはずです。

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