口座開設で詐欺、キャッシュカード売却で犯収法違反

2019-07-26

口座開設で詐欺、キャッシュカード売却で犯収法違反

Aさんは、とある特殊詐欺グループの一員であるBさんから(AさんはBさんがそのグループに所属しているとは知らない)、「Aの名義で銀行口座をいくつか開設して、それを俺に売ってほしい。高値で買い取るから。」という申し入れを受けました。Aさんはいけないことだとは分かっていながらも、お金に困っていたためこれを承諾しました。AさんはV銀行へ行き、行員に「光熱費などの引き落としのため。」などと自分で使用するかのような嘘を言うなどして銀行口座開設を申込み、それをすっかり信用した行員から同口座に係るキャッシュカード1枚及び通帳1通の交付を受けました。その後、Aさんは郵便局へ行き、レターパックを購入してレターパックにキャッシュカード1枚、通帳1通及び暗証番号を記載したメモ用紙を入れ、Bさんに指定された住所宛に郵送し、Bさんから現金1万円の振込みを受けました。そうしたところ、後日、同口座は特殊詐欺グループの振込み用の専用口座だったことが判明し、凍結処置を受けました。そして、Aさんは、福岡県門司警察署の捜査により、詐欺罪、犯収法違反の疑いで逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~ 自分名義の口座を開設しても詐欺罪? ~

詐欺罪は刑法246条に規定されています。

刑法246条
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人に得させた者も、同項と同様とする。

本件のような通帳詐欺で適用されるのは専ら「1項」です。

1項を分かりやすくすると、詐欺罪は、客観的には、①欺罔行為(騙す行為)→②錯誤(被害者が騙されること=被害者の認識が客観的事実と一致しない状態)→③処分行為による財物の移転(交付行為=被害者が現金等を郵送するなど)→④財産上の損害、の一連の流れがあり、主観的には、犯人の①~④までの「故意(認識)」

が必要ということになります。

上記のように、詐欺罪の成立には「騙す意図(故意)」と「騙す行為(欺罔行為)」が必要です。つまり、本件に関していえば、本来、他人に使用させるつもり、すなわち、自ら使用する意図がないにも関わらず、これがあるように装う(嘘を言うなど)行為が「欺罔行為」とされます。また、そのような意図(故意)があったか否かは、外部からではなかなか判断しずらいですが、例えば、

・短期間に複数の銀行口座開設している
・複数の預金通帳を所持している
口座開設後、短期間で他人に譲渡等している
・複数の通帳等を譲渡等している
・生活口座として利用した形跡がない

などの事実が認められれば「騙す意図(故意)」ありと推認されてしまうおそれがあります。すなわち、上記のような事実が認められれば、いくらあなたが「実は自分で使うつもりだった」
などと弁解しても通用しないおそれがありますから注意が必要です。

~ キャッシュカード等を売った場合 ~

キャッシュカード等を売却した場合は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(略して「犯収法」とも呼ばれます(以下、犯収法といいます))に問われるおそれもあります。
犯収法の目的は、マネーロンダリングとテロ資金供与の防止を図ることにあります。

犯収法28条2項では、

キャッシュカード等を譲り受ける相手方に、Aさんが契約した預貯金契約のサービス(現金の払い戻し等)を受ける意思等があることを知りながら、キャッシュカード等を譲渡、交付、提供すること

あるいは、

正当な理由がなく、有償で、キャッシュカード等を譲渡、交付、提供すること

を禁じており、罰則は、

1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科

とされています。

いうまでもありませんが、はじめは自分で使うつもりで開設した口座に係るキャッシュカード等を譲り渡すなどした場合でも犯収法違反とされるおそれがあります。

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