小倉北区で飲酒運転発覚をおそれ被害者に現金授与①

2019-05-28

小倉北区で飲酒運転発覚をおそれ被害者に現金授与①

福岡県小倉北区に住む会社役員の男性は、仕事の関係者が集う立食パーティーに参加し、そこで多量のお酒を飲んだ後、飲酒運転して(のちの捜査で呼気からアルコール濃度0.5mg/lが検出)帰宅しました。その途中、Aさんは信号待ちのVさんが運転する前車に気づかず追突してしまいました(のちに、Vさんは加療約2週間の怪我を負ったことが判明)。Aさんは「大変なことをしてしまった」と思い、車から降りて運転席に乗車したままのVさんの元へ歩いていきました。Aさんは、ドアガラスを開けたVさんに「大丈夫ですか」と声をかけると、Vさんから「何とか」「きちんと賠償してくれるんでしょうよね」と言われました。Aさんは、「怪我だけは大したことなかった」と思い、Vさんに連絡先の電話番号を書いたメモ紙とお見舞金としての5万円を手渡しました。しかし、Aさんは、「ここで現場に留まり、警察を呼ぶと飲酒運転したことがばれる」と思い、Vさんに別れを告げてその場から離れ帰宅しました。後日、Aさんは、福岡県小倉北警察署に、過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪、道路交通法違反(救護義務違反、報告義務違反)で逮捕されてしまいました。
(令和5月16日に掲載された西日本新聞記事を基に作成したフィクションです。)

~ はじめに ~

上記事例は実際の事例を基に作成しています。新聞記事等では「過失傷害アルコール等影響発覚免脱罪」と書かれていますが、正確には、

過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪

といいます。この罪は

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、法律)

という法律が新設された際(施行日は平成26年5月20日)に設けられた罪で、法律の4条に規定されています。

~ 新設の趣旨 ~

過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪が新設された趣旨は、学説からは様々な批判があるものの、一般に

「逃げ得」を防止するため

と説明されています。
つまり、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させて人を死亡させた場合には危険運転致死罪が適用されますが (法律2条1号、。法定刑の上限は懲役20年)、 その場合に犯人が逃走することで、 アルコールによる影響の程度を立証できないために危険運転致死罪の適用を免れる事態が生じてしまいます。 こうした法制の下では、 救護義務違反罪 (いわゆる、ひき逃げ) を犯してでも、罪の重たい危険運転致死傷罪の適用を免れるためにその場を逃走する者が生じやすくなり、結果として、過失運転致死罪と救護義務違反でしか処罰できないということになりかねません(この場合の刑(処断刑)の上限は懲役15年)。 そこで, このような「逃げ得」を防止し, 適正な処罰を可能とするために本罪を新設したと説明されています。

~ 過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪とは ~

では、過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪の内容について具体的にみていきましょう。法律4条では次の規定が設けられています。

法律4条
 アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意義務を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、さらにアルコールを摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処する。

仮に、過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪と救護義務違反が成立した場合の刑の上限は

懲役18年

で、過失運転致死罪と救護義務違反で処罰する場合よりも刑が重たくなったことがお分かりいただけると思います。

法律4条の規定が長いので、これを箇条書きにしてまとめると、過失運転致(死)傷アルコール等影響発覚免脱罪は

(行為者):アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者
(条 件):運転上必要な注意義務を怠り、よって人を死傷させた場合
(行 為):アルコール又は薬物の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為

をした場合に成立し得る犯罪だ、ということをまず押さえておきましょう。次回は、この要件の具体的内容について解説したいと思います。

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