過失傷害罪と告訴の取消し

過失傷害罪と告訴の取消しについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

福岡市早良区に住むAさん(24歳)は、地下鉄西新駅の駅構内をスマホを操作しながら歩いていました。そうしたところ、Aさんは、前方を歩いていた高齢のVさん(80歳)に気づかず、Vさんの背後からVさんにぶつかってしまい、Vさんを前のめりに転倒させて、Vさんに全治2週間の怪我を負わせてしまいました。Aさんは、駅員を呼び、救急車を手配してVさんを近くの病院まで運んでもらいました。そして、後日、AさんはVさんの息子Wさんと会い、事故の状況などを話したところ、Wさんから「治療費を支払って欲しい。」「誠意が見られなければ警察に告訴する。」と言われました。不安になったAさんは、今後の対応について弁護士に相談しました。
(フィクションです)

~過失傷害罪~

歩きスマホをしながら他人に怪我を負わせた場合は、過失傷害罪(刑法209条)他人を死亡させた場合は、過失致死罪(刑法210条)重大な過失により人を死傷させた場合は、重過失致死傷罪(刑法211条後段)に問われる可能性があります。歩きスマホによって、自ら負傷した場合、もちろん刑事的な責任を問われることはありませんが、上記のように他人に怪我を負わせたあり、死亡させた場合は、刑事責任を問われることがありますので注意が必要です。

まず、過失傷害罪は刑法209条に規定されています。

刑法209条
 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。

「過失」とは、要は、注意義務違反のことで、「~すべきだったのに(~することができたのに)、~しなかった」といえる場合に成立します。これを歩きスマホに当てはめると、歩行者としては、前や周囲をよく見て歩くべきだったのに、(スマホの画面に注意を取られ)、前や周囲をよく見て歩かなかった,といえ「過失」は優に認めることができます。「より」とは過失と傷害との間に「因果関係」が必要であることを意味しています。よって、本件では、Aさんの「過失」と傷害との間に「因果関係」が認められる場合は、Aさんは過失傷害罪で処罰されそうです。

また、過失傷害罪のほか、過失致死罪は刑法210条、重過失致死傷罪は刑法211条後段に規定されています。

刑法210条
 過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。

刑法211条後段
 重大な過失により、人を死傷させた場合も、同様とする。(5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)

「重大な過失」とは、重過失、つまり、過失の程度が酷い、悪質なことをいいます。歩きスマホの場合、どんな場合に酷い、悪質かと判断するかについては、当時の交通状況、歩きスマホの態様などによって判断されるものと思われます。
なお、両罪は過失傷害罪と異なり、親告罪ではありません。

なお、過失傷害罪は、検察官が公訴を提起する(起訴する)に当たって被害者の告訴を必要とする親告罪です。検察官が公訴を提起する前に、被害者が告訴を取消せば、刑事処分は自動的に「不起訴」となります。

~告訴の取消しなら示談交渉~

親告罪は被害者等の処罰意思を尊重する制度ですから、検察官が公訴を提起する前に被害者等が「処罰は望まない」「許してほしい」などといって告訴を取消すことができます。被害者等が告訴を取消せば,刑事処分は自動的に「不起訴(親告罪の告訴の取消し)」となります。
このように被害者の方々の処罰感情を緩和させ、告訴を取消していただくには、まずは被害者の方々に誠心誠意謝罪した上で示談交渉を開始し、お互い納得のいく条件で示談を成立させることが肝要かと考えます。交渉には様々な困難が伴いますし、のちのちのトラブルを防ぐには適切な内容・形式で示談を成立させる必要があります。
そのためには弁護士の力が必要です。示談交渉は弁護士にお任せください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件も取り扱う刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方はフリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談等を24時間受け付けております。

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