間接正犯で器物損壊罪の告訴取消し

2019-07-07

間接正犯で器物損壊罪の告訴取消し

福岡県太宰府市に住むAさんは隣に住むVさん家族が夫婦仲睦まじく、週末は必ず遠出するなど裕福な生活を送っていることを妬んでいました。そこで、Aさんは、Vさんの夫が日頃運転している、Vさん方駐車場に停められている高級外車に傷をつけてやろうと考えました。しかし、自ら直接傷をつけると万が一見つかった場合に、今後の付き合いに支障が出てはいけないと思い、いたずら好きな息子B君(9歳)に、「ねえ、B君、あの車、隣の人が傷つけていいっていってたよ。」「傷つけてきてごらん。」といいました。B君はAさんから言われるがまま、Vさん夫が運転する高級外車の運転席ドアに長さ10センチほどの傷をつけました。そのとき、Vさんが自宅から出てきてB君を捕まえました。VさんがB君から事情を聴くと、B君は「お母さんから傷つけていいって言われたから。」といいました。そうして、後日、Aさんは、Vさんから福岡県筑紫野警察署告訴状を提出され、器物損壊罪で事情を聴かれることになりました。
(フィクションです)

~ 器物損壊罪とは ~

器物損壊罪は、刑法261条に規定されています。

刑法261条
 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

「前三条に規定するもの」とは、公用文書等(刑法258条)、私用文書等(刑法259条)、建造物等(刑法260条)を指しますから、器物損壊罪の対象(客体=「他人の物」)とは、これら以外の有体物ということになります。ちなみに、動物も「物」に含まれます。
ここでの「損壊」とは動物以外への毀棄、「傷害」とは動物に対する毀棄をいいます。毀棄とは、物理的な毀損・破壊行為のみならず、ひろく物の本来の効用を失わせる行為を含むと解されています。

器物損壊罪の罰則は、上記のとおり

3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料

です。科料(1万円未満)も定められていますが、器物損壊罪において科料が科されるケースは稀だと思います。

~ Aさんは処罰される?(間接正犯について) ~

ところで、今回、実際に車に傷つけている人(これを「正犯」といいます)はV君です。法律上は、実際に犯罪に当たる行為をした者を処罰するのが原則です。しかし、V君は14歳未満の刑事未成年者であり、V君を刑法上の罪に問うことはできません。

では、Aさんはどうでしょうか?この場合、Aさんは実際に犯罪に手を下していない、犯罪に当たる行為をしていないからといって処罰できないとするのでは、あまりにも不合理です。そこで、実務などでは、Aさんを間接正犯として処罰できるとしています。
間接正犯とは、間接的に正犯を実行する、つまり

人を道具として使って犯罪を実行すること

をいいます。間接正犯には

・被利用者(V君)が責任能力を欠く場合(本件の場合)
・被利用者が強制により意思を抑圧されている場合
・被利用者に故意がない場合
・被利用者の行為が適法である場合

などがあります。
間接正犯も正犯と刑責は同じですから、減軽事由などはありません。正犯と同じく、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処せられる可能性があります。

~ 器物損壊罪は親告罪 ~

告訴がなければ、検察が公訴を提起(起訴)できない犯罪を親告罪といいます。器物損壊罪は親告罪です。他にも,未成年者略取・誘拐罪(刑法224条),名誉棄損罪(刑法230条),侮辱罪(刑法231条),過失傷害罪(刑法209条),親族間の窃盗罪(刑法244条2項,235条等)などがあります。

* かつては親告罪,現在は非親告罪 *

他方で、告訴が不要な犯罪を非親告罪といいます。ほとんどの罪が非親告罪ですが,性犯罪の中には親告罪だと誤解されやすい犯罪もありますから注意が必要です。以下の犯罪は、すべて非親告罪です。強制わいせつ罪(刑法176条),準強制わいせつ罪(刑法178条1項),強制性交等罪(旧強姦罪)(刑法177条),準強制性交等罪(旧準強姦罪)(178条2項),ストーカー規制法のストーカー行為の罪(同法18条),営利目的等(わいせつ・結婚目的等)略取・誘拐の罪(刑法225条)など。

~ 告訴取消し,不起訴を求めるなら示談を ~

親告罪において,告訴取消されれば起訴されることは絶対にありません。つまり,確実に不起訴処分を獲得できます。不起訴処分の獲得を目指すに当たっては,まずは被害者様に謝罪の意を示し,示談交渉を始めて示談締結を目指します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、器物損壊罪など親告罪などの刑事事件を専門の法律事務所です。被害者との示談から告訴取消し、不起訴処分獲得をご検討中の方は、弊所の無料法律相談初回接見サービスのご利用をご検討ください。

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