【事例解説】住居侵入罪とその弁護活動(のぞきを目的として女性の住宅に侵入したケース)

【事例解説】住居侵入罪とその弁護活動(のぞきを目的として女性の住宅に侵入したケース)

今回は、私生活をのぞき見る目的で女性宅に侵入したというニュース記事に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律福岡支部が解説致します。

事例:のぞきを目的として女性の住宅に侵入したケース

女性の住宅に侵入した罪で起訴された福岡県春日市の職員Aさんが、18日付で懲戒免職処分を受けました。
懲戒免職処分を受けたのは、住居侵入の罪で起訴された福岡県春日市在住の公務員Aさん(43)です。
Aさんは先月14日、市内の30代女性Vさんの住宅に侵入した疑いで現行犯逮捕。
その後、Vさんの私生活をのぞき見る目的で、合い鍵を使って侵入したとして住居侵入の罪で起訴されていました。
テレビ愛媛 3/18日 21:40配信の記事を参考にし、地名や内容を変更し引用しています。)

1,住居侵入罪について

〈住居侵入罪〉

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」(刑法130条

刑法130条は、正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看取する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した場合(前段)と、要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった場合(後段)に分け、前段を住居等侵入罪、後段を不退去罪としてそれぞれ処罰することを規定しています。
前段の住居侵入罪は、一般的には不法侵入という言葉で広く社会で使われており、侵入した場所によって成立する犯罪の名前が異なります。
例えば、正当な理由がないにもかかわらず、他人の管理下にある建物のうち住居・邸宅以外のものに侵入した場合には、建造物侵入罪が成立することになります。
住居侵入罪は、①正当な理由がないのに、②人の住居若しくは④人の看取する邸宅建造物もしくは艦船に⑥侵入した場合に成立する犯罪です。
住居侵入罪の保護法益は住居権、すなわち住居に誰を立ち入らせ誰の滞留を許すかを決める自由であり、各要件に該当するか否かを判断するうえで重要となります。
②の「人の」とは犯人自身がその住居の居住者ではないことを意味します。
③「住居」とは、人が起臥寝食に利用する場所のことを言います。
起臥寝食とは起きたり寝たり食べたりすることを言うので、分かりやすく言えば、人が生活するために使う場所のことであり、具体的には家やマンション、さらに一時的に利用するホテルの部屋であっても「住居」に含まれます。
④「人の看取する」とは、犯人以外の人が事実上管理することを言います。
例えば守衛や監視人を置くことで立ち入りを禁止する場合のように、侵入を防止する人的・物的設備を施されている状態がこれに当たります。
⑤「邸宅」とは居住用の建造物で住居以外のものを言い、空き家などがこれに当たります。
建造物」とは、住居用以外の建物を言い、学校、遊園地などのテーマパークなどがこれに当たります。
艦船」とは、軍船及び船舶のことで人が侵入できる構造のものをいい、船着場にとまっている漁船や小型フェリーなどがこれに当たると考えられます。
⑥「侵入」とは、住居権者の意思に反する立ち入りを意味します(⑤に侵入する場合には管理権者の意思に反する立ち入り)。
違法な目的を隠して住居や建造物に侵入した場合、その目的を住居権者や管理権者が知っていれば立ち入ることを承諾していなかったであろうと言える場合には、130条前段の犯罪が成立します。
過去には、ATM利用客のカードの暗証番号を盗撮する目的でATMが設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入った場合,その立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客と異なるものでなくても,建造物侵入罪が成立するとした裁判例があります。(最高裁平成19年7月2日 事件番号 平成18(あ)2664
最後に、①「正当な理由がないのに」とは、侵入の違法性を排除する理由がないことを意味します。
立ち入りに対して住居権者の承諾がある場合には、そもそも「侵入」に当たらず住居侵入罪は成立しないので、この要件は、住居権者の意思に反する立ち入りであることを前提に、例えば刑事訴訟法に基づく捜索のための立ち入りなど「侵入」を正当化する理由がないことを言います。

2,のぞきにおける住居侵入罪とその弁護活動

のぞき目的での「侵入」に「正当な理由」があるわけではなく、のぞいた対象は住居侵入罪にいう「住居」に該当するため、住居侵入罪が成立する可能性が高いです。
また、のぞき行為は都道府県の迷惑防止条例軽犯罪法に違反し、処罰の対象となります。
福岡県の迷惑防止条例では、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由なく、住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるよう な場所で当該状態にある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影することを禁止しており(6条3項1号)、これに違反した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の刑が科されます(11条1項)。
軽犯罪法では、正当な理由なく、人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者には、拘留又は科料が、もしくは併科されます。(1条23号2条
迷惑防止条例軽犯罪法の両方で正当な理由がないのぞき行為を禁止していますが、その違いは、のぞき行為を公共の場所又は公共の乗物で行ったどうかにあることが考えられます。
上記の事例で言えば、AさんはVさんの自宅をのぞき見る目的で侵入しているため、軽犯罪法の処罰の対象となる可能性があります。
住居侵入罪で逮捕・勾留された場合、最長で23日間、身柄を拘束されることになります。
その間に警察と検察の取調べを受け、起訴するか不起訴になるかが検察官によって判断されます。
そこで、弁護士に依頼するメリットの一つとして取調べ対応へのアドバイスが挙げられます。
弁護士であれば、身柄を拘束されている被疑者に対して、どのように取調べに臨めば良いかなど法律の専門家として適切かつ丁寧なアドバイスを授けることができます。
また、住居侵入罪は被害者が存在する犯罪でもあります。
そこで、被害者との示談交渉を行うことが考えられます。
示談交渉は加害者と被害者の当事者同士で行うこともできますが、通常、当事者同士での示談交渉は成立する可能性が低いです。
加害者が被害者に示談を迫れば捜査機関側からは証拠を隠滅するのではないかと疑われかねず、そもそも捜査機関側が被害者の連絡先を教えないことも考えられます。
しかし、弁護士が間に入れば、被害者に丁寧な説明ができ、安心して頂ける期待も高まります。
それにより、示談交渉の成立に向けた第一歩を踏み出すことができます。
また、示談と一口に言っても、加害者の一方的な主張だけを聞き入れてもらう交渉では成立は難しいと言えます。
被害者の意向を加味しながら、宥恕条項(加害者の謝罪を受け入れて、加害者の刑事処罰を求めないこと)などの条項を加えた示談を成立させる必要があります。
特に身柄を拘束されている事件の場合には、逮捕されてから起訴されるか否かの判断まではわずか23日間しかありません。
そのため、示談交渉は速やかに行い成立させることが必要不可欠です。
以上より、刑事弁護はスピードが大事です。
住居侵入罪で逮捕・勾留により身柄を拘束されてしまった場合には、一刻も早く弁護士に依頼することが重要となってきます。

3,まずは弁護士に相談を

福岡県内において住居侵入罪の当事者となってしまった方、または親族が当事者となり逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部に、お気軽にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には刑事弁護の経験や実績が豊富な刑事事件に特化した弁護士が在籍しており、初回無料でご利用いただける法律相談逮捕・勾留により身柄を拘束された方のもとに弁護士が直接赴く初回接見サービス(有料)をご提供しております。
ぜひ一度、ご相談ください。

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