【事例解説】事後強盗罪とその弁護活動(コンビニで万引きしたあと、店員にナイフを出して脅したケース)
今回は、コンビニで食料品を万引きした際に店員に見つかり、声をかけられたところ、ナイフを取り出して脅したという架空の事例に基づいて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説致します。
事例:コンビニで万引きしたあと、店員にナイフを出して脅したケース
福岡県警察西警察署は、福岡市西区にあるコンビニエンスストアにおいて、食料品など10点(被害額約5000円)を万引きしたあと、店員の男性にナイフを出して脅したとして、福岡市西区在住のAさんを事後強盗の疑いで逮捕しました。
Aさんは、品物を万引きした際に店員の男性に見つかり、警察に通報すると告げられたところ、逮捕されるのを免れるために、店員の男性にナイフを突きつけて「警察に通報したら刺すぞ」などと言い、その場から逃走したとのことです。
店員の男性に怪我はありませんでした。
犯行現場やその周辺の防犯カメラの映像を解析するなどの捜査を進め、Aさんの犯行を特定し、逮捕に至りました。
警察の調べに対し、Aさんは「お金がなくてやった。警察に捕まりたくなかった」などと供述し、容疑を認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)
1,事後強盗罪について
〈事後強盗罪〉(刑法238条)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぐ目的(財物奪還阻止目的)、逮捕を免れる目的(逮捕免脱目的)または証拠を隠滅する目的(罪証隠滅目的)のいずれかの目的で、暴行または脅迫をした場合には、強盗として論ずる、すなわち刑法に定められた強盗罪が成立することになります。
「窃盗が」とは、窃盗犯人、つまり窃盗罪(刑法第235条)を犯した者をいい、万引きは窃盗罪に該当します。
上記の事例では、窃盗犯人であるAさんは警察に通報すると告げた店員に対して、逮捕を免れる目的でナイフを取り出して脅迫しています。
そのため、Aさんには事後強盗罪が成立する可能性があります。
なお 、窃盗罪には、財産上の利益を窃取すること(これを利益窃盗と言います。)を処罰する規定が存在しないため、1項強盗罪(刑法236条第1項)が成立することになります。
例えば、初めから無賃乗車するつもりでタクシーに乗れば、運送サービスという財産上の利益を騙し取ったことになり、詐欺罪(刑法第246条第2項)が成立することが考えられます。
しかし、タクシーに乗りしばらくしてお金がないことに気付き、目的地に到着して運賃の支払いを求められたタイミングで運転手の目を盗んで逃走した場合には、財産上の利益を窃取したことになりますが、利益窃盗を処罰する規定が存在しないため、不可罰となります。
ただし、「財布を忘れた。取りに帰りたいからいったん降ろしてくれ。」などと嘘をついて逃走した場合には、その行為は欺罔行為に該当し詐欺罪(刑法第246条第2項)が成立する可能性があります。
〈強盗罪〉(刑法236条)
第1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
強盗罪は、暴行または脅迫を用いて、他人の財物(第1項)または財産上の利益(第2項)を強取した場合に成立します。
「強取」とは、相手方(被害者など)の反抗を抑圧させるに足りる程度の暴行または脅迫を加えて財物または財産上の利益を奪取することをいいます。
暴行とは、人の身体に対する不法な有形力の行使をいいます。
脅迫とは、相手方に畏怖を生じさせる程度の害悪の告知をいいます。
2,執行猶予付き判決獲得に向けた弁護活動
事後強盗罪は強盗罪として処罰されることになるため、刑罰は5年以上の有期懲役が科されることになります。
執行猶予は、判決によって言い渡される刑罰が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金である必要があります。(刑法25条1項柱書)
そのため、事後強盗罪で有罪判決を受けてしまった場合、執行猶予が付かない可能性があります。
しかし、犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、裁判所は、その刑を減軽することができます。(刑法第66条)
「犯罪の情状に酌量すべきもの」とは、例えば、被害者との間で示談が成立しているなどの事情がある場合をいいます。
示談交渉は、事件の当事者間でも行うことはできますが、通常は事件の被害者は加害者に接触されることに恐怖を感じて、示談交渉に応じてもらえない可能性が高いです。
また、上記の事例のように、コンビニなどのお店も被害者である場合、最初から示談に応じないという姿勢のところが多いですが、弁護士が粘り強く交渉することで、示談交渉に応じてもらえる場合もあります。
そのため、示談交渉は、交渉のプロである弁護士に依頼することが得策であるといえます。
示談が成立すれば、執行猶予付き判決の獲得が十分に期待できます。
3,まずは弁護士に相談を
福岡県内においてご家族等が事後強盗罪の当事者となり身柄拘束を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部には、刑事事件・少年事件を専門的に取り扱い、刑事事件・少年事件に関する経験・実績が豊富な弁護士が在籍しております。
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