児童ポルノ製造罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
北九州市門司区に住むAさんは,SNSで知り合った女子中学生Vさん(13歳)に連絡して,スマートフォンで裸の写真や動画を撮らせ、それを自己のスマートフォンに向けて送らせました。その後,Aさんは,再びVさんに性的な写真や動画を送らせようとしたところ拒まれたため,「(以前に送らせた)動画をネットに公開するぞ」「写真を学校の校門の前にばらまくぞ」などと脅して送るよう要求しました。
(フィクションです)
~児童ポルノ製造罪~
本件のように,スマートフォンに向けて児童(18歳未満の者)の性的な写真や動画を送らせる(正確には,スマートフォンメモリに記憶・蔵置させる)行為は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下、法律)7条4項に当たる可能性があります。
法律7条4項
(略)児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造した者も,第2項と同様とする。
なお、「姿態をとらせ」とありますが、行為者(Aさん)の言動等により,当該児童(Vさん)が当該姿態をとるに至ったことをいい,何も強制手段によることは要せず,被写体となる児童が製造に同意しているかどうかも無関係と解されています。「第2項と同様とする」とは、罰則が「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」であることを意味しています。
~条例違反?~
では,事例の後半のように,児童に性的な写真・動画の送信を拒まれたにもかかわらず,さらに送るよう要求した場合,何らかの犯罪に当たるのでしょうか?
この点,上記の児童ポルノ製造の罪は,
実際に送らせた行為を処罰するもの
で,要求行為(提供を求める行為)を処罰するものではありません。
しかし,福岡県では,福岡県青少年健全育成条例(以下、条例)で要求行為を処罰する旨の規定を設けています。
条例31条の2 何人も、青少年(18歳未満の者)に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
1号
青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等(略)の提供を行うように求めること。
2号
青少年を威迫し、欺き、若しくは著しく困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること。
この規定の「提供を行うように求めること」という文言からもお分かりいただけるかと思いますが、青少年に対し、児童ポルノを送るよう(提供するよう)求めただけで処罰する、という規定となっています。なお、1号は、青少年から一度拒まれたことが、2号は、威迫、欺き、困惑、対償の供与・約束行為が必要となっています。罰則は「30万円以下の罰金」です。
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