【児童虐待】エアガン事件~保護責任者遺棄致死罪で再逮捕(福岡県飯塚市)
保護責任者遺棄致死罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県飯塚市の県営団地に住むAは、妻B、子Vちゃん(1歳)と3人暮らしです。
A、BはVちゃんに必要な食事を与えず栄養失調で死亡させたとして保護責任者遺棄致死罪で福岡県飯塚警察署に逮捕されてしまいました。
A、Bは「必要な食事は与えていた。」、「死ぬとは思わなかった。」などと話しています。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~ 保護責任者遺棄致死傷罪 ~
福岡県田川市では、団地に住む両親が、昨年9月上旬~12月にかけて、子に医師の診察を受けさせず、重度の低栄養状態による肺炎で死亡させたとして、保護責任者遺棄致死罪で再逮捕されています。当初の逮捕容疑は、エアガンを使って子にBB弾を複数命中させて傷害を負わせた傷害罪でしたが、処分保留で釈放されています。BB弾の命中行為と傷害との因果関係の立証が難しいと判断された可能性もあります。
報道によると、両親は生後8カ月ごろを最後に診察を受けさせていなかった、と言われています。また、1歳4カ月だった子の死亡時の体重は6キロ未満だったといいます。これは平均体重の約10キロを大きく下回っており、捜査機関は、子に医師の診察を受けさせなかったことが子の死亡につながった(つまり因果関係がある)とみて保護責任者遺棄致死罪の逮捕に踏み切ったのでしょう。
子に必要な保護を与えないのネグレクトと呼ばれます。
ネグレクトは児童虐待防止法で児童虐待の一つとして明確に定義されています。
児童虐待防止法ではネグレクトを「児童の心身の発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること」と定義されています。
しかし、ネグレクトをはじめとする児童虐待で逮捕される事案が後を絶ちません。
ネグレクトで子を死亡させた場合は上の事例のように保護責任者遺棄致死罪という罪で逮捕されることが多いかと思います。
今年7月には、2歳11カ月の長女を3日間以上のあいだ自宅に放置し低体温症で死なせたとして、宮城県仙台市在住の母親の飲食店従業員女性が保護責任者遺棄致死罪の疑いで逮捕されています。室内に幼児が摂取できる飲食物はなかったとみられ、司法解剖の結果、死亡時の体重は約8.6キロで目立った外傷はなかったと言われています。
保護責任者遺棄致死罪は刑法219条に規定されています。
刑法219条
前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処する。
「前2条の罪」とは、単なる遺棄罪(刑法217条)と保護責任者遺棄罪(刑法218条)のことを指します。
このうち、親が子に対するネグレクトは「保護責任者遺棄」にあたり、これに「人の死傷」が加わり、「保護責任者遺棄」と「人の死傷」との間に因果関係が認められれば保護責任者遺棄致死罪に問われます。
刑法218条
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。
「生存に必要な保護をしなかった」という点がネグレクトに当たる部分です。
・食事を与えない
・入浴させない
・オムツを取り替えない
などは全てネグレクトに当たります。
保護責任者遺棄致死傷罪の法定刑は、傷害を負わせた場合は「3月以上15年以下の懲役」、死亡させた場合は「3年以上の有期懲役」です。
保護責任者遺棄致死罪は、「殺す意図はなかった。」という場合、つまり死の結果について認識、認容がなかった場合に適用される罪です。
反対に、死の結果について認識、認容があったと認められた場合は殺人罪(刑法199条)に問われる可能性もあります。
刑法199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
~ まずは児童相談所に相談を ~
子育ては大変です。
子育てに困った、児童虐待をしてしまいそうだ、などという方は迷わず児童相談所に相談されることをお勧めいたします。
子育てなどの悩みは決して一人で解決できるものではありません。
周囲の方を巻き込んで解決していく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。