放火と失火の違い

2019-07-16

放火と失火の違い

 
会社員のAさんは、妻Bさん、子供2人の4人家族です。AさんはかつてBさんと寝室のベットで一緒に寝ていましたが、現在は不仲でAさんは寝室、Bさんは子供たちの部屋で寝ています。Aさんは大のタバコ好きで、Bさんから健康のためにも止めるように言われていたものの、それでも止めることはできず、寝る前に寝室でタバコを吸うことが日課となっていました。
そして、ある日、Aさんはいつものように寝る前にタバコを吸いました。Aさんはタバコを灰皿に捨てたつもりでしたがタバコは床に落ちており、床のカーペットに引火し、煙が出てきました。Aさんは、火が引火し煙が出ていたことは認識していたものの「Bさんとは近いうちに離婚しよう」と思っていたことから、「家が燃えてしまっても構わない」と思い、消火活動をせず、火が壁に燃え移るなどの光景をただ茫然と眺めていました。そうしたところ、異変に気づいたBさんがAさんの寝室に入り、緊急で119番通報する一方で、水にぬらしたタオルなどを火元に被せるなどして消火活動に努めました。最終的には消防隊員による消火活動の結果、寝室の一部を焼損させるにとどまりました。
その後、Aさんは小倉北警察署失火罪で逮捕されましたが、捜査の結果、現住建造物等放火罪で起訴されてしまいました。

~ 火を使った犯罪 ~

刑法の第9章の

放火及び失火の罪

に規定される

・現住建造物等放火罪(刑法108条)
・非現住建造物等放火罪(刑法109条)
・建造物等以外放火罪(刑法110条)

では「放火して~」と規定されているのに対し、

失火罪(刑法116条)

では、「失火して~」と規定されています。

刑法108条 
 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

刑法116条1項
 失火により、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。

そこで、まず、はじめに「放火」と「失火」の違いからご説明いたします。

~ 放火と失火の違い ~

放火」とは、

故意に目的物(家等の建造物)の焼損(燃えること)に原因力を与えること

をいうとされています。

(例)ライターで新聞紙に火をつけ、その新聞紙を家の中に投げ込む
   燃えている火の中に油を注ぎこむ など

これに対して、「失火」とは、

過失によって出火させること

をいいます。すなわち、具体的状況下において、一般普通人に要求される注意義務に違反して、目的物の焼損に原因を与えたことをいいます。

(例)油料理で火を使ってる最中、かかってきた電話に夢中になり、油を枯渇させて火を台所壁に燃え移らせた
   タバコの不始末 など

~ 失火罪から放火罪への可能性も? ~

放火罪失火罪の法定刑は大きく異なりますから、いずれの罪が適用となるかは非常に重要です。
実務でも、失火罪から放火罪の適用に変わったり、反対に、放火罪から失火罪に適用されるというケースがあります。後者の場合は刑が軽くなりますが、前者の場合は重くなりますから、いずれが適用になるのかは非常に重要な問題です。

では、どのような場合に失火罪から放火罪に適用されることがあるのでしょうか?

そもそも、失火罪は「~すべきなのに~しなかった」場合に適用される犯罪ですが、判例(昭和33年9月9日)は、同様の場合に放火罪が適用されると判示しています。

判例の事案は、残業中、大量の炭火のおこっている火鉢を可燃物の置いてある事務室の木机の下に置いたまま別室で仮眠していた会社員が、仮眠から覚めて事務室に戻り、火鉢の炭火が木机に燃え移っているのを発見しましたが、宿直員を起こして協力を得れば容易に消火することができたのに、自己の失策の発覚をおそれてそのまま逃走したため、建物を焼損させた

というものでした。
このように「放火」は何もしない(消火活動を行わない)という不作為によっても実現できるとされています。しかし、「何もしない」というだけで罪が適用されてしまえば、人々の行動を制限することになりかねません。そこで、判例は、犯人に

・消火義務
・消火の可能性、容易性
・放火の故意

という要素を吟味して放火罪の不作為かどうかを判断しています。

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