泥酔者を放置して軽犯罪法違反!?
泥酔者を放置する行為による軽犯罪法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県福岡市東区に住むAさんは、自己の敷地内に顔を赤くし、酒臭がする一見して明らかな泥酔者Bさんが寝込んでいるのを発見しました。ところが、Aさんは、「下手に声をかけたら怖い。」「うちとは関係ない人だからそっとしておこう」などと思って警察に通報することなくそのまま放置していました。すると、たまたまAさん宅近辺を巡回中の警察官XがBさんを発見しました。そして、Aさんは警察官Xから職務質問を受け、「自分には保護する義務はないからそのまま放置した。」などと言ったところ、警察官Xから、「それはいけませんよ。」「少なくともわれわれ警察官に通報してもらわないと。」「軽犯罪法違反に当たりますよ。」などと言われてしまいました。Aさんとしては、軽犯罪法の何という罪に当たるのか気になり、刑事事件専門の弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです)
~ 要扶助者・死体等不申告の罪 ~
軽犯罪法1条18号には要扶助者・死体等不申告の罪が規定されています。
どういう罪なのか、まずは条文から確認しましょう。
18号
自己の占有する場所内に、老幼、不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら、速やかにこれを公務員に申し出なかった者
つまり、18号に当たる者は「拘留又は科料」に処する、というのが軽犯罪法1条18号の趣旨です。
要扶助者・死体等不申告の罪と似ている罪として刑法217条の遺棄罪があります。
刑法217条
老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、1年以下の懲役に処する。
ただ、刑法217条の「遺棄」とは、移置、つまり被遺棄者(老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者)を従来の場所から生命・身体に危険な場所に移転することをいい、その移転する場所は特に限定を設けていません。
他方、要扶助者・死体等不申告の罪では、「自己の占有する場所内」にある要扶助者、死体等を対象としており、場所の移転を予定しておらず、単に放置するだけ(つまり、公務員に申し出なかっただけ)で罪に問われてしまう可能性があります。
なお、「自己の占有する場所」とは、現実に支配している場所をいいますから、自宅敷地がこれに当たることは明らかでしょう。
次に「扶助を必要とする者(要扶助者)」とは、老年、幼年、不具(身体器官の不完全なこと)若しくは傷病のため精神的・肉体的欠陥を生じ、他人の力なしでは自力で行動をとることが困難な者をいいます。
「老年」、「幼年」かどうかにうちては明確な年齢の基準はなく、その人その人の個別具体的事情により決まります。
「病」については、精神病者はもちろんのこと、白痴、催眠術にかかった者、飢餓者、疲労困ぱい者、泥酔者などもこれに含まれると解してよいでしょう。
最後に、「速やかに」というのがどの程度の時間の経過をいうのでしょうか?
これについても明確な基準はなく、要扶助者の状態、発見時刻等や、応急処置を施すのに時間を要したものであるかどうかといったこと、その他具体的状況に照らして、社会通念に従って判断されます。
~ 場合によっては遺棄罪、保護責任者遺棄罪等に問われるかも? ~
「遺棄」とは、先ほども申し上げたとおり、場所的移転を伴う行為ですから、たとえばAさんが「邪魔だ」と思ってBさんを公園などの他の場所に運んだ、という場合は先ほどご紹介した遺棄罪に問われる場合があります。
また、まったく赤の他人でも、一度介抱したり保護すれば、あなたは法律上の保護義務を負う場合があります。その場合、面倒臭くなって途中で保護をやめた場合などは保護責任者遺棄罪に問われる可能性がありますから注意が必要です。
また、両罪の結果、人を死傷させた場合は遺棄等致死傷罪、保護責任者遺棄致傷罪(刑法219条)に問われる可能性もありますから注意が必要です。
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