【住居侵入等(刑法130条)】
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
1.「住居侵入罪」「建造物侵入罪」(130条前段)
住居者の意思に反して他人の住居や建造物に立ち入ることを処罰する規定であり、「侵入」とは、住居権者の意思に反して住居等に立ち入ることと解されています(※)。
住居侵入罪の「人の住居」とは、日常生活に使用されている場所をいいます。
たとえば、他人が住んでいる一戸建ての住宅や、マンションの各居室、事務所などがあります。
「邸宅」とは居住用の建造物で住居以外ものをいい、空き家などが具体例です。
建造物侵入罪の「建造物」は、上記以外の建造物をいい、官公庁の庁舎、学校、工場、倉庫などが挙げられます。
「艦船」とは、軍艦および船舶をいいます。
(※)最判昭和58年4月8日
「刑法130条前段にいう「侵入」とは、他人の監守する建造物等に管理者の意思に反して立ち入ることをいうと解すべきであるから、管理者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、当該建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などから見て、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、ほかに犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、同条の罪の成立を免れないというべきである」
2.具体的検討
(1)建造物侵入罪と表現の自由(憲法21条1項)
具体的には、「集合住宅の各室玄関ドアの新聞受けに政治的な意見を記載したビラを投函する目的でその敷地部分等に立入った」行為について建造物侵入罪が成立するかが争われました。
政治的意見を表明することは憲法上(21条1項)保障されますが、一方で住居者の意思も尊重すべき場面といえます。
判例は、政治的意見を記載したビラの配布は、表現の自由の行使といえるものの、絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないとしたうえで侵入者に対し、立ち入った場所は一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではなく、たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、このような場所に管理権者の意思に反して立入ることは、管理権者の管理権を侵害するものみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ないとして建造物侵入罪の罪に問うことは憲法21条1項に違反しないとしました。
→この判例から、全てのビラ配布行為のための立入りがすべて処罰されると解すべきではありませんが、侵入した場所の特徴、侵入態様等と侵入者が有している価値の比較衡量で住居侵入罪の成立の有無が左右されるように考えます。
3.住居侵入罪の量刑
住居侵入罪の法定刑は、「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」と犯罪の中では刑が比較的軽い部類に存します。
しかし、金品奪取目的であったり(侵入盗)、余罪が多い場合、正式裁判にかけられ実刑の可能性もありえます。
住居侵入罪の嫌疑をかけられた場合には、早期の対応が必要となります。
4.「不退去罪」(130条後段)
住居兼者の同意を得て住居等に入った者が、退去の要求を受けたにもかかわらず退去しない場合に「不退去罪」が成立します。
具体例として、駅の構内に適法に立ち入った後ビラ配りなどを行い、駅の管理者から退去を求められたにもかかわらず、その場所から退去しない場合などが挙げられます。
~住居侵入罪等の弁護活動~
1. 示談活動
早期に示談交渉に着手して、不起訴処分・略式罰金など有利な結果を導けるように活動します。
住居侵入罪は、被害者がいる犯罪であるため示談解決がポイントとなります。
弁護士に依頼することにより被害者とコンタクトをとりやすくなり、冷静な交渉により妥当な金額での示談解決が図りやすくなります。
2.早期の身柄開放を目指します。
逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。
そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡のおそれがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。
3.有利な処分を獲得
起訴猶予による不起訴処分又は略式裁判(罰金を支払うことにより手続きから解放される制度)になるよう弁護活動を行います。
侵入の経緯や具体的態様など犯罪の悪質性が軽微であること、被害感情の緩和などを主張してゆきます。
4.情状弁護
仮に正式裁判になった場合でも、裁判所に対して、上記3のような主張・立証をすることで、減刑又は執行猶予付き判決を目指した弁護活動を行います。
5.否認事件
身に覚えがないにも関わらず住居侵入罪や建造物侵入罪の容疑をかけられてしまった場合、弁護士を通じて、警察や検察などの捜査機関及び裁判所に対して、不起訴処分又は無罪判決になるよう主張する必要があります。
例えば、相手の同意があった場合には住居侵入罪は成立しません。
具体的事情を主張し、証拠を提出して不起訴・無罪を勝ち取ることができるよう活動します。
住居侵入罪・建造物侵入罪・不退去罪でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へお問い合わせください。
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