【事例解説】不同意性交等罪とその弁護活動(性交後に同意がなかったと主張された架空の事例に基づく解説)

 この記事では、架空の事例を基に、性交の同意があったとして不同意性交等罪の成立を争う場合の弁護活動について、解説します。

不同意性交等罪とは

 不同意性交等罪は、相手の同意なく性交する行為を処罰するための法律です。
 この罪は、暴行や脅迫がなくとも、相手が同意する意思を持てない状態にある場合に成立する可能性があります。
 例えば、相手がアルコールなどの影響で意識が不明瞭な状態や、精神的な圧力を感じている状況下での性交がこれにあたります。

 令和5年の法改正により、以前の強制性交等罪は不同意性交等罪と名称が変更され、法的な扱いも更新されました。
 改正後の法定刑は、5年以上の拘禁刑とされており、「拘禁刑」の施行までは「懲役」とされています。この変更は、性犯罪に対する社会的な認識の変化と法的な対応の必要性を反映しています。

 不同意性交等罪の成立要件は複雑で、被害者の内心の状態や、当事者間の関係性、事件の状況など、多岐にわたる要素が考慮されます。
 したがって、この罪に問われた場合、専門的な法律知識と経験を持つ弁護士のアドバイスが不可欠となるのです。

事例紹介:性交後に同意がなかったと主張されたケース

 福岡市内の会社員Aさんは、あるマッチングアプリを通じて20代の女性Vさんと知り合いました。数回の食事を共にした後、AさんはVさんを自宅に招き、夕食を共にしました。
 その夜、二人は性交に及びますが、後日Vさんは「嫌だ」と言ったにも関わらずAさんに強いられたとして、福岡県中央警察署に被害届を提出しました。これにより、Aさんは不同意性交等の容疑で警察の取り調べを受けることになります。
 Aさんは「性交は合意の上だった」と主張していますが、Vさんの訴えにより、捜査が進められている状況です。

 この事例はフィクションですが、実際の事件では、被害者と加害者の供述がしばしば食い違い、真実が何であるかを見極めることが法律の専門家にとって重要な課題となります。

問われる同意

 不同意性交等罪において最も論点となるのは、「同意」の存在です。
 このケースでは、AさんはVさんの同意があったと主張していますが、Vさんはその事実を否定しています。法律上、同意の有無は被害者の内心に関わる問題であり、それを証明することは容易ではありません。

 事件の真相を解明するためには、当事者間の関係性、当時の状況、そして事件前後の行動など、多角的な視点からの検証が必要となります。例えば、マッチングアプリやメッセージのやり取り、当日の行動パターンなどが、両者の主張を裏付ける証拠として検討されることでしょう。

 弁護側は、Vさんが同意する意思を形成できなかった、またはその意思を表明することが困難であったという事実を否定するために、客観的な証拠や証言を集める必要があります。また、AさんがVさんの非同意を知り得なかった、あるいは誤解していた可能性を示すことで、容疑を否認する戦略を立てることが考えられます。

証拠の役割

 不同意性交等罪の事件における証拠は、真実を解明するための鍵となります。
 架空の事例では、AさんとVさんの主張が対立しており、どちらの言い分に真実性があるのかを判断するには、具体的な証拠が不可欠です。

 通常、この種の事件では、通信記録、目撃証言、現場の証拠、医学的所見などが重要な役割を果たします。例えば、事件当日のAさんとVさんのメッセージのやり取りは、同意があったかどうかの状況証拠として検討されることになります。また、第三者の証言や、事件現場の状況を示す写真やビデオなども、事実関係を明らかにするために重要です。
 しかし、証拠は常に明確な答えを提供するわけではありません。証拠の解釈は、しばしば主観的な要素を含み、異なる見方が可能です。そのため、弁護士は証拠を慎重に分析し、クライアントに有利な方法で提示するための戦略を練る必要があります。このプロセスは、弁護の成功において決定的な要素となることが多いのです。

法的弁護戦術

 不同意性交等罪の容疑に直面した際、弁護士は複数の戦術を駆使してクライアントの権利を守ります。架空の事例においても、Aさんの弁護団は以下のような戦略を展開することが考えられます。

 まず、Vさんの主張に矛盾点がないか徹底的に調査します。これには、Vさんの過去の行動パターンや、事件当日の行動、Aさんとの関係性に関する証拠を精査することが含まれます。
 また、Vさんの精神状態や、事件に至るまでの経緯を詳細に検討し、同意があったというAさんの主張を裏付ける証拠を集めることが重要です。

 次に、Aさんが誠実に同意を得たと信じていたという証拠を提示することで、誤解に基づく行為であった可能性を示唆します。これは、Aさんの認識とVさんの意思表示との間に齟齬があったことを示すことにより、故意ではないことを主張する戦略です。

 さらに、第三者の証言や、事件当夜の両者の行動を記録した映像など、客観的な証拠を用いて、Aさんの主張に信憑性を持たせることも考慮されます。これらの証拠を通じて、Aさんの無罪を証明するための弁護戦略を構築することが、弁護士の重要な役割となります。

通信記録の影響

 不同意性交等罪の訴訟において、通信記録はしばしば重要な証拠となります。
 架空の事例では、AさんとVさんの間のメッセージのやり取りが、事件の解明に役立つ可能性があります。

 事件前のメッセージは、二人の関係性や、その夜の出来事に対する期待を示すことができます。例えば、フレンドリーで親密なやり取りがあれば、それは同意が存在したことの指標となり得ます。
 一方で、Vさんが不安や疑念を示していた場合、それは同意がなかったことの証拠として解釈されるかもしれません。

 事件後の通信は、事件の認識に関する両者の態度を反映します。Aさんが事件後に謝罪のメッセージを送っていた場合、それは罪悪感の表れと見なされる可能性があります。
 しかし、これらのメッセージは文脈を考慮せずに解釈されるべきではなく、全体のやり取りの流れの中で評価される必要があります。

 弁護士は、これらの通信記録を慎重に分析し、クライアントの主張を支持する証拠として利用する方法を模索します。通信記録は、事件に関する両者の真実の意図を解き明かす手がかりとなるため、その取り扱いには細心の注意が払われるのです。

福岡県の不同意性交等罪に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、法改正前の強制性交等罪の否認事件において、嫌疑不十分による不起訴処分を獲得している実績があります。
 福岡県での不同意性交等事件で、自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部へご相談ください。

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