軽犯罪法違反(凶器携帯)の容疑で逮捕中に行われた強制採尿により、覚醒剤取締法違反(使用)の容疑で逮捕された架空の事件を参考に、覚醒剤使用事件における別件逮捕の違法性とその弁護活動について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
参考事件
福岡市在住の自営業男性A(32歳)が深夜、同市中央区中洲の路地に佇んでいたところ、巡回中の福岡県中央警察署の警察官Pに気づき慌てた様子で立ち去ろうとしました
PはAを呼び止め、Aの様子から覚醒剤使用の疑いがあると考え、職務質問を行ったところ、Aは氏名や住所を明らかにしませんでした。
また、PはAの承諾を得て所持品を検査したところ、覚醒剤などの薬物は発見できませんでしたが、ポケットに刃渡り5.5センチメートルのカッターナイフを所持していたことから、軽犯罪法違反(凶器携帯)の容疑でAを現行犯逮捕しました。
警察署で取調べを行ったPは、Aに任意での尿検査を提案しましたが応じなかったため、令状により強制採尿したところ、覚醒剤の陽性反応が出たことにより、Aは覚醒剤取締法違反(使用)の容疑で逮捕されました。
(事例はフィクションです。)
軽犯罪法違反での逮捕について
Aは、正当な理由がなく刃物を隠して携帯していた、として軽犯罪法違反で逮捕されました(同法第1条第2号参照)。
軽犯罪法違反の法定刑は、拘留又は科料のみ規定されているため、いわゆる「軽微犯罪」として、通常の要件に加えて、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合、に限り現行犯逮捕が認められます(刑事訴訟法第217条)。
Aは、職務質問に対し氏名や住所を明らかにしなかったため、現行犯逮捕の要件を一応充たしていたものと考えられます。
軽犯罪法違反での逮捕が、要件を充たすため逮捕時点では違法でないと認められたとしても、取調べにおいて、Aに任意での尿検査を提案し、Aが応じなかったため強制採尿するなど、軽犯罪法違反での逮捕による身体拘束を利用して、覚醒剤取締法違反(使用)での捜査を行っていることから、違法な別件逮捕と言えないでしょうか。
次回の後編では、別件逮捕の違法性について、解説します。
覚醒剤使用事件で別件逮捕が行われた場合の弁護活動
覚醒剤使用が疑われる事件においては、被疑者が任意採尿に応じない場合、裁判官の強制採尿令状を得られるまでの間、被疑者を身体拘束する法的な根拠がないことなどから、被疑者を実質的に拘束する手段として別件逮捕が行われ、別件逮捕の違法性が争われる事例が見受けられます。
別件逮捕の違法性が認定されたことにより、違法な別件逮捕による身体拘束を利用して得られた証拠の証拠能力が否定された結果、無罪となった裁判例が数多くあります。
他方で、別件逮捕の違法性を認定しつつも、得られた証拠の証拠能力までは否定せず有罪とされた裁判例もあるため、公判で別件逮捕の違法性を主張することにより無罪を争うことは容易ではありませんが、弁護人が、起訴される前の段階で検察官に対し、別件逮捕の違法性を十分な説得力をもって主張することで、検察官が不起訴処分を選択する可能性を高めることができると考えられます。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、覚醒剤使用などの薬物事件で、不起訴処分を獲得した実績があります。
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