ひき逃げ事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県直方市に住む主婦のAさんは、パートを終え、車を運転して帰宅途中に、見通しのよい道路を走行していたところ、急に車道に飛び出してきた自転車と接触する交通事故を起こしてしまいました。
Aさんは、ドアミラーで自転車が転倒したのを確認しましたが、「相手が急に車道に飛び出してきたのだから自分は悪くないし、ちょっとした接触だからたいした怪我もしていないだろう」と考え、車を停止させることなく交通事故現場を立ち去ったのです。(後日、自転車を運転していた男性が加療約3週間の怪我を負っていたことが判明した)。
その結果Aさんは、現場付近の防犯ビデオ映像や、交通事故現場に残されていた痕跡などから福岡県直方警察署にひき逃げの容疑で逮捕されてしまいました。
逮捕を知ったAさんの夫は、弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです)
この記事をご覧の方にも、日頃、ニュースなどで「当て逃げ」もしくは「ひき逃げ」の報道を耳にされることは多いのではないでしょうか?
ひき逃げを行うと助かったであろうはずの命をも奪うことになりかねず、それゆえ交通事故の中でも重大事故の一つに挙げられます。
もっとも、交通事故を起こすと気が動転してしまい、適切な措置をとりにくいものです。
今回は、そのひき逃げについてご紹介していきたいと思います。
ひき逃げはどんな行為?
ひき逃げがどんな行為か細かくみていきましょう。
ひき逃げとは、
①誰が→車両等の運転者が
②どんな場合に→人身事故を起こした場合に
③どんなことをした→必要な措置を講じなかった
場合のことをいいます。
これに対して、当て逃げとは、
①誰が→車両等の運転者が
②どんな場合に→物損事故を起こした場合に
③どんなことをした→必要な措置を講じなかった
場合のことをいいます。
「必要な措置」とは?
では、「必要な措置」とはどんな措置なのでしょうか?
この点については、道路交通法72条1項に規定されていますから、この規定をさらに細かくみていきます。
ア、ただちに車両等の運転を停止しなければならず、事故現場から立ち去ってはいけません。(停止義務:道路交通法72条1項前段)
イ、負傷者を救護し、危険を防止するための措置を講じなければなりません。(救護義務:道路交通法72条1項前段)
その上で、負傷者を救護し、道路における危険を防止するなどの必要な措置を講じなければなりません。
「負傷していない(怪我をしていない)」などと勝手に自己判断してはいけません。
負傷しているかどうかは素人では判断しづらく、医者の判断を待ってはじめて明らかとなるのがほとんどなので、「負傷しているかどうか分からない」という場合も救護義務が生じ、これを取らなかった場合は救護義務違反となりますから注意が必要です。
「負傷者を救護」する例としては
・現場において応急の手当てを取る
・119番通報する
・病院への搬送
などが挙げられます。
また「道路における危険を防止する」は「必要な措置」の例示に過ぎません。
ですから、道路内、道路外を問わず、必要とあるならば危険を防止するための措置を取る必要があります。
ウ、警察官に事故を届け出なければならない。(事故報告義務:道路交通法72条1項後段)
上記したア、イと同時に、警察官に事故内容などを報告しなければなりません。
ア、イの措置はとったものの、「交通事故を起こしたことがばれたくない」「他の犯罪がばれるのが怖い」などを理由に、警察に事故を届け出なかった場合は事故報告義務違反となります。
~明日は、ひき逃げの罪や、罪の重さなどについてご紹介していきます。~