公務執行妨害罪と早期釈放に向けた弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県粕屋町に住むAさんは通りがかりの福岡県粕屋警察署の警察官Vさんに職務質問を受けました。その際、AさんはVさんから所持品のことをしつこく聴かれたため、酒に酔って気が大きくなっていたことも手伝って、「お前に何の権限があるんだ!」と言いながらVさんの胸を両手で押し後方に突き飛ばしました。そのため、Aさんは公務執行妨害罪の現行犯として逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~公務執行妨害罪~
公務執行妨害罪は刑法95条1項に規定されています。
刑法95条1項
公務員が職務を執行するにあたり、これに対して暴行・脅迫を加えた者は3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
Aさんが納得していないのは、
1 石を直接、警察官にぶつけたわけではないのに公務執行妨害罪の「暴行」と言えるのか
2 石をパトカーに投げつけただけで、実際に、公務員の職務を「妨害」してないではないか
という点だと思います。以下、1、2につきご説明します。
= 上記1(公務執行妨害罪の「暴行」とは) =
刑法の規定の中には「暴行」という言葉がよくつかわれますが、その意味は各罪名によって異なりますから注意が必要です。刑法の「暴行」は次の4種類に分けられます。
① 最広義の暴行(例:騒乱罪(刑法106条))
有形力の行使すべてを含み、対象は人であっても物であってもよいとされています。
② 広義の暴行(例:強要罪(刑法223条))
人に対する有形力の行使をいいますが、直接暴行だけではなく、間接暴行も含むとされてます。
③ 狭義の暴行(例:暴行罪(刑法208条))
人の身体に対する有形力の行使をいいます。
④ 最狭義の暴行(例:強盗罪(刑法236条)、事後強盗罪(238条)、強制性交等罪(177条)、強制わいせつ罪(刑法176条))
人の身体に対する有形力の行使で、人の反抗を抑圧するか、著しく困難にする程度のものとされています。
このうち、公務執行妨害罪の「暴行」は上記②に当たります。直接暴行とは、人の身体に直接に有形力を加えることですが、間接暴行とは、物に対する有形力で、それにより間接的に一定の人に物理的・心理的に感応を与えるようなものを意味します。すなわち、後者の場合、直接人の身体に暴行を加える必要はありません。Aさんの「パトカーに石を投げつけ、フロントガラスにひびを入れた」という行為もこの間接暴行に当たりそうです。
= 上記2(公務執行妨害罪の「妨害」とは) =
上の暴行の程度ですが、当然、職務執行の妨害となる程度のものである必要がありますが、それによって現実に職務の執行が妨害されたことを必要とされません。これは、公務執行妨害罪の目的が公務の円滑な執行を保護するためにあるからです。過去には、警備中の警察官に対する1回だけの命中しなかった投石行為につき公務執行妨害罪の成立を認めた判例(最判昭33年9月30日)があります。
Aさんの周囲には警察官が5名おり、しかも、パトカーに損害を加えただけで、実際に職務に当たる警察官には危害を加えていないから公務を「妨害」したというには違和感を感じます。しかし、それでも公務執行妨害罪が成立するおそれがありますから注意が必要です。
~早期釈放に向けた弁護活動~
公務執行妨害罪は、警察官から職務質問を受けた際に警察官とトラブルとなった際に適用されることの多い罪です。
警察官に手を出した場合、その警察官に現行犯逮捕されてしまうことが多いでしょう。
もっとも、公務執行妨害罪はその罪の性質上、釈放されたとしても罪証隠滅行為を行うことが難しい罪といえます。
そのため、弁護士が勾留の理由や必要性がない旨記載した意見書やご家族の方の上申書などを裁判所に提出することによって、勾留されずに釈放されることも少なくありません。万が一勾留されてしまった場合には裁判所に対して勾留に対する準抗告の申立てをし、1日でも早い身柄解放を目指します。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、公務執行妨害罪等の刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。ご家族が刑事事件で逮捕されお困りの方は、0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。