【窃盗】執行猶予獲得のためには
窃盗罪の執行猶予獲得について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県みやま市に住むAさんは,数年前から万引きを繰り返すようになり,過去3年以内に,1回、窃盗罪で微罪処分を受け、1回、窃盗罪で罰金20万円の略式命令を受けていました。そして,ある日,Aさんはスーパーで再び万引きしたところを保安員に目撃され窃盗罪で逮捕されてしまいました。Aさんの逮捕の通知を受けた母親は,何としてでも実刑だけは避けたいと思い,執行猶予付き判決の獲得を目指して弁護士に刑事弁護を依頼することにしました。
(フィクションです)
~Aさんの処分は?~
Aさんは過去3年以内に同じ窃盗罪で罰金刑を受けています。これは前科1犯とカウントされます。また、微罪処分を受けたことは前歴としてカウントされます。そして、犯行時から3年以内に同種前科1犯、前歴1回があると、次の刑事処分は
正式起訴(公判請求)
される可能性が高いです。
正式起訴されると、Aさんが過去すでに罰金刑の前科を有していることから、検察側から
懲役刑
を求刑される可能性が高いでしょう。
懲役の長さは
6月から1年
が相場だと思われます。
仮に、実刑判決が言い渡されると、Aさんは刑務所に服役しなければならない可能性が出てきます。
実刑を回避するには、執行猶予付き判決を獲得しなければなりません。
~執行猶予とは~
刑の執行猶予とは,有罪判決をして刑を言い渡すに当たって,情状により,その執行を一定期間猶予し,その期間を無事経過したときは刑の言渡しを失効させる制度のことをいいます。刑の執行猶予には,大きく分けて「刑の全部の執行猶予の制度」と,「刑の一部の執行猶予の制度」の2種類があり,前者はさらに,「最初の執行猶予の制度」と「再度の執行猶予の制度」の2種類に分けられます。
最初の執行猶予(付き判決)を受けるための要件は,刑法25条1項に規定されています。
刑法25条1項
次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは,情状により,裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間,その刑の全部の執行を猶予することができる
1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を受けた日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
つまり,最初の執行猶予(付き判決)を受けるには
1 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けること
2 上記1号,あるいは2号に該当すること
3 (執行猶予付き判決を言い渡すのが相当と認められる)情状があること
が必要ということになります。
~上記1について~
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
また、上記のように、はじめて正式起訴される場合は、判決で、
懲役6月から1年
を言い渡されることが相場です。
したがって、上記1の要件は満たします。
~上記2について~
上記2については、まずは
・なんら前科のない人
・前科があっても罰金刑(実刑,執行猶予付きを含む)以下の前科を有する人
は含まれる、と考えてよいです。
この点、Aさんは罰金刑の前科しか有していませんから「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」に当たります。
~上記3について~
情状は,犯罪そのものに関する情状(犯情)とその他の一般情状に区別されます。
犯情とは,犯行動機・態様,被害結果などの要素があり,万引きが終わった後ではいかんともしがたい事実です。
他方,一般情状については,万引き後でも,いくらでも有利に動かすことができます。事実を認めるのであれば,まずはスーパー側に謝罪することが必要でしょう。そして,反省を深め,被害者が被った被害に思いをいたし,被害弁償を進め,可能であれば示談を締結する必要があります。それが,裁判では,有利な情状として考慮され得るからです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、窃盗罪をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。刑事事件での執行猶予獲得をご検討中の方は弊所までお気軽にご相談ください。
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