大阪府淫行条例改正の動き
福岡県と大阪府の淫行条例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県飯塚市に住む会社員のAさん(40歳)は、SNSで知り合ったVさん(16歳)が18歳未満の者であると知りながら、Vさんと福岡県飯塚市内のホテルへ行き、そこでVさんと淫行しました。そうしたところ、数か月経って、Aさんは、福岡県飯塚警察署に、福岡県青少年健全育成条例違反で逮捕されました。Aさんは、接見に来た弁護士に、「Vさんとは交際中だったので逮捕には納得いかない」などと話しています。
(フィクションです。)
~ 福岡県と大阪府の淫行条例 ~
淫行条例とは、各都道府県単位で制定されている「青少年健全育成条例」のことです。淫行条例の名称は各都道府県自治体によって異なります。なお、福岡県は福岡県青少年健全育成条例、大阪府も大阪府青少年健全育成条例と呼ばれています。
なぜ、今回、大阪府の淫行条例を持ち出したかというと、今、大阪府の淫行条例が改正に向けて動き出しており、それがネットなどで話題となっているからです。
また、大阪府の現在の淫行条例と福岡県の淫行条例を比べてみると両者の違いがよくわかり、なぜ大阪府が淫行条例の改正に向けて動き出しているかがよくわかります。
現在の大阪府の淫行条例の規定(一部)は以下のとおりです。
大阪府淫行条例39条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない
2号 専ら性的欲望を満たす目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと
これに対し、福岡県の淫行条例の規定は以下のとおりです。
福岡県淫行条例31条1項
何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつな行為をしてはならない。
つまり、大阪府の淫行条例では淫行またはわいせつな行為の手段として青少年に対する「威迫」「欺く」「困惑」を必要としているのに対し、福岡県の淫行条例ではそれを必要としていません。
ここで、たとえば「威迫」とは、暴行、脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により心理的威圧を加え、相手方に不安の怠を抱かせること、「欺き」とは、嘘を言って相手方を錯誤に陥らしめ、又は真実を隠して錯誤に路らしめることを言います。
大阪府ではこうした要件が加わるだけで捜査機関側の淫行の立件、立証が難しく、それが淫行の温床にもつながっていると批判されており、それが今回の淫行条例の改正の動きにつながっています。
今後は、淫行の手段とされている「威迫」「欺き」「困惑」の要件はなくなりそうですが、真剣な交際中の淫行については処罰の対象から除外するとのことです。今後いかなる規定となるかは不明ですが、このことは現在の福岡県の淫行条例でも同様です。なぜなら、「淫行」の意義について判例は
広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性行為類似行為
としており、これからすれば「真剣な交際」と認められるのであれば「淫行」には当たらないからです。
ただ、「真剣な交際」か否かは、
①加害者と青少年の年齢(差)、関係、
②知り合った経緯、
③知り合ってから性交に至るまでの期間・経緯、
④性交の内容、頻度、⑤加害者側の事情(独身か否かなど)、
⑤被害者側の事情(学生か否かなど)、
⑥交際内容などの事情
などの客観的事情も検討する必要があります。
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