教諭が盗撮で逮捕~佐賀県
教諭による盗撮事件での逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
佐賀県の県立高校の教諭であるAさんは、今年6月と7月、佐賀市内の居酒屋の男女兼用のトイレ内の洗面台下に、幅2・3センチの盗撮用の小型カメラを設置し、男女合計10人の裸などを盗撮した佐賀県迷惑行為防止条例違反の疑いで佐賀南警察署に逮捕されました。女性店員がカメラの存在に気づき、佐賀南警察署に提出したところ、動画にはAさんの顔や姿などが映っており、これが逮捕のきっかけになったようです。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~ 佐賀県迷惑行為防止条例 ~
事例は、先日8月27日、県立高校教諭の男性が盗撮した佐賀県迷惑行為防止条例の疑いで逮捕された、というニュースを基に作成しております。
佐賀県迷惑行為防止条例(以下、条例)では、条例3条2項、3項に盗撮に関する規定を設けています。
条例3条
2 何人も、公共の場所等又は特定多数の者が使用する場所等(事業所、学校その他の特定かつ多数の者が使用する場所又は貸切バスその他の特定かつ多数の者が使用する乗物を いう。次項において同じ。)において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 衣服等で覆われている人の下着又は人の身体を写真機、ビデオカメラ、携帯電話その他の機器(以下「写真機等」という。)を使用して撮影すること。
(2) 衣服等で覆われている人の下着又は人の身体を撮影する目的で写真機等を向け、又は設置すること。
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所であって、次に掲げる要件のいずれかに該当するもの において、当該状態でいる人の姿態を写真機等を使用して撮影し、又は当該姿態を撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。
(1) 公衆が利用することができること。
(2) 特定多数の者が使用する場所等にあること。
~ Aさんの行為はどれに当たる? ~
Aさんが小型カメラを設置した場所は「男女兼用トイレ」で、「男女兼用トイレ」は条例3条3項の「便所」に当たります。また、3条3項3号の「公衆」とは不特定又は多数をいいますっから、「男女兼用トイレ」は同号の「公衆が利用できること」に当たるでしょう。
さらに、Aさんは、小型カメラを使って男女の裸などを盗撮した、とのことですから「衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる人の姿態を写真機等を使用して撮影」したことに当たるでしょう。
よって、Aさんの行為は、条例3条3項3号に当たる可能性が高いと思われます。
~ 罰則は? ~
条例11条1項により、条例3条に違反した者は、
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
常習として行った場合は、条例11条2項により
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
です。
Aさんに常習性などが認められない場合は罰金刑を受ける可能性が高いと思われます。
ただ、被害者と示談などできた場合は不起訴処分を獲得できる可能性もあるでしょう。
~ Aさんの身分はどうなるの? ~
Aさんのような教諭は地方公務員にあたり、その身分の取り扱いに関しては地方公務員法に規定されています。
そして、Aさんが地方公務員としての地位を失うのは「失職」による場合と、「懲戒免職」による場合です。
失職とは、文字通り、職を失うことを意味しますが、もっと狭い意味では、公務員が退職手続や懲戒処分によらずに自動的に職を失うことをいいます。
手続によることなく職を失うわけですから、かなり厳しい処分といえます。
地方公務員法28条4項には、
職員は、第16条各号(3号を除く)の一に該当するに至ったときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失う
と規定されており、16条2号には
禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
と規定されています。
「禁錮以上の刑」とは、死刑、懲役刑、禁錮刑と意味し、罰金刑は含まれません。つまり、本件で罰金刑を受けても失職は回避できるわけです。
しかし、もう一つの「懲戒」事由に当たる可能性があります。
地方公務員法29条1項には、
職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対して懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
と規定され、その3号で、
全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった者
としているからです。
いかなる処分となるかは任命権者の裁量によりますが、教諭という生徒の模範となるべき地位からすると厳しい処分を下されることが予想されます。
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