類型別交通事故の発生状況~人対車両~
人対車両の交通事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
福岡県飯塚市に住むAさんは、福岡県飯塚市内の道路で普通乗用自動車を運転中、交差点を右折しようと対面の青色信号に従い交差点に進入し、直進車の通過を待って同交差点で右折を始めたところ、青色の信号表示に従って横断歩道上を横断してきたVさん(85歳)に自車を衝突させてVさんを路上に転倒させてしまいました。Aさんはすぐさま車を止め、車から降りてVさんに対する救護活動や、警察への110番通報をしました。その後、Vさんは病院に運ばれ、加療約3週間の怪我を負ったことが判明しました。また、Aさんは福岡県飯塚警察署において過失運転致傷罪で事情を聴かれることになりました。
(フィクションです。)
~ 類型別交通事故の発生状況 ~
交通事故を起こさないためには、事前に、どんな類型の交通事故が多いのか知っておくことも大切ではないかと思います。
警察庁交通局が発表した「平成30年中の交通事故の発生状況」によれば、
1 車両相互 370,614件
2 人対車両 48,618件
3 車両単独 11,286件
としており、やはり「車両相互」間の交通事故件数が一番多いことが分かります。
さらに、統計では、この交通事故類型ごとに、細かく交通事故の類型及びその件数を分析しています。
たとえば、「車両相互」では、
① 追突 149,561件
② 出会い頭 106,331件
③ その他 39,123件
④ 右折時 35,037件
⑤ 左折時 19,149件
という順となっています。また、「人対車両」では、
① 横断中 29,236件
② その他 11,391件
③ 対面通行中 3,017件
④ 背面通行中 4,539件
という順となっており、「人対車両」では「相手方横断中」の交通事故が圧倒的といっていいほど多いことが分かります。
~ 横断歩道を通過しようとする際の注意点 ~
そこで、今回は、車両等の運転者が横断歩道上を通過しようとする際の注意点について改めて確認したいと思います。
この点、道路交通法38条では以下の規定が置かれています。
【道路交通法38条】
1 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進 路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による 停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断 歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければな らない。
2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除 く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その 前方に出る前に一時停止しなければならない。
3 車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他 の車両等(軽車両を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない。
1項前段(~「速度で進行しなければならない」まで)は横断歩道等に近接する車両等の速度に関する義務、1項後段は、車両等の一時停止、歩行者等の通行を妨げない義務を定めたものです。
2項は、横断歩道等あるいはその直前に車両等がある場合の同車両等の側方を通過する際の一時停止義務、3項は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路における追い抜き禁止義務を定めたものです。
2項、3項は、横断歩道等には歩行者等がいるが蓋然性が高いにもかかわらず、各状況下で一時停止することなく車両等を追い抜こうとすれば、横断歩道等に対する見通しが悪いことから、車両等の運転手に一時停止義務や追い抜き禁止義務を課したものです。
~ 罰則規定も? ~
なお、故意に道路交通法38条1項から3項までの義務に違反した場合は
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
過失による場合は、
10万円以下の罰金
に処せられる場合がありますから注意が必要です。
もっとも、今回は、自動車の運転によって人に怪我をさせていますから道路交通法の適用はなく、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の第5条(過失運転致傷罪)が適用され、
7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金
に処せられる可能性があります(ただし、初犯の場合など情状が悪質でない場合は罰金刑、あるいは不起訴で終わることもあります)。
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