ヤフオクドームでのダフヤ行為
福岡市早良区に住むAさんは福岡ソフトバンクホークスの大ファンです。ところが、Aさんは、ある日、ヤフオクドームの敷地内で,観戦チケットを十数枚手にしながら「いい席あるよ~」などと通行人に声をかけていたところ、福岡県早良警察署の警察官の職務質問を受けてしまいました。その後の捜査の結果、Aさんは福岡県迷惑行為防止条例違反の被疑者として立件されてしまいました。今後のことが不安になったAさんは弁護士に無料相談を申込みました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
筆者が子供のころは、当時、福岡ドーム(現、ヤフオクドーム)の敷地内に強面の男性が複数人いて、「いい席あるよ~」とか「いいチケットあるよ~」などと声をかけていた光景があったことを思い出します。最近は、野球を観戦する機会が以前ほどなくなり、こうしたダフヤ的行為が行われているのかどうか分かりませんが、印象としては以前よりは減ってきているのではないでしょうか?
しかし、福岡県迷惑行為防止条例ではダフヤ行為を禁止する規定を以前として設けていることから、まずは、その規定の内容から確認することとします。
~ ダフヤ行為の禁止 ~
福岡県では、福岡県迷惑行為防止条例(以下、条例)2条でダフヤ行為が禁止されています。
条例2条1項は、
乗車券等を、不特定の者に転売し、又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、乗車券等を、公衆に販売する場所において、買い、又は公衆の列に加わって買おうとする行為
を、条例2条2項は、
転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所、又は公共の乗物において、不特定の者に売り、又は人につきまとって売ろうとする行為
を禁止するものです。
罰則は、
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
とされています(条例11条3項)。
* 乗車券等とは *
乗車券等とは、乗車券、急行券、指定券、寝台券その他の運送機関を利用し得る権利を証する物又は入場券、観覧券その他公共の娯楽施設を利用し得る権利を証する物とされています(条例2条1項)。野球の観戦チケットは観覧券に当たります。
* 公共の場所、公共の乗物とは *
公共の場所とは、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場、飲食店その他の公共の場所をいい、公共の乗物とは、汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物をいうとされています(条例2条2項)。ヤフオクドームの敷地内は、その他の公共の場所に当たるでしょう。
~ 条例2条2項について ~
ダフヤ行為で多く適用されるのは条例2条2項の方ではないかと思います。
条例2条2項では、「転売する目的で得た乗車券等」の売る行為等を禁止していますから、例えば、
知人が野球を観に行くために買ったが、急用が入ったため観に行けなくなり、不要となったことから譲ってもらった
という観戦チケットは「転売する目的で得た乗車券等」とは言い難いでしょう。
「売り」とは、値段の多寡は問いません。よく、
定価で売ったからダフヤ行為には当たらないだろう
と思われている方もおられるかもしれませんが、条文は、高額な乗車券等だけを対象とする規定とはなっていませんから、
たとえ定価や、定価以下で売ってもダフヤ行為となります
から注意が必要です。
また、実際に売らなくても
つきまとって売ろうとした
場合は処罰の対象となります。「つきまとう」と言えるためには、一定程度の距離、時間等が必要となるかと思います。
~ ネット上での転売行為も規制 ~
6月14日には、チケット転売防止法(正式名称、特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)が施行されました。ネット上での取引では、「公共の場所」といえないため、施行前までは条例で取り締まることができなかったとして新たに作られた法律です。
これからは、ネット上での転売行為もダフヤ行為として取り締まられていきますので注意が必要です。
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