執行猶予期間中の車の運転はOK? 

執行猶予期間中の車の運転はOK? 

福岡市早良区に住むトラック運転手のAさんは,真夜中,一人で帰宅中の女性を背後から襲い,女性の両胸を揉むなどした強制わいせつ罪で起訴され,裁判で「懲役2年 4年間執行猶予」の判決を受けました。Aさんは,判決後釈放されました。Aさんとしては,トラック運転手の仕事を続けたかったし,車が趣味だったことからプライベートでも運転したいと考えています。そこで,Aさんは,弁護士に「執行猶予期間でも運転できるのか」尋ねました。
(フィクションです)

~ はじめに ~ 

判決で執行猶予付きの刑を言渡されると,裁判官から執行猶予は取り消されることがあること,取り消される場合,取り消された場合どうなるのかなどについて説明があります。しかし,日常生活においてどんなことに注意すべきか個別具体的に説明があるわけではありません。そこで,今回は,執行猶予中の生活に関するよくある疑問についてお答えしたいと思います。

~ 裁判で「有罪」となった場合,免停,取消しとなるの? ~

Aさんが刑事裁判で「有罪」とされ,懲役刑や禁錮刑を受けたからといって,そのことが運転免許の停止や取消しに繋がるわけではありません。「有罪」か「無罪」かを決める手続は「刑事手続」,運転免許の免停,取消しの処分は「行政手続」のルールにのっとって進んでいきますが,両者は全く別個の手続だからです。
ただし,酒気帯び,酒酔い,無免許運転などの交通違反をした場合は,そのこと自体に違反点数が設けられていますから,違反点数に加え,行政処分歴,累積点数などが加味されて免停,取消しの行政処分が決められます。交通違反には懲役刑,罰金刑などの罰則が設けられ,刑を科す場合は「刑事手続」にのっとり手続が進められていきます。

以上からすれば,Aさんが裁判で「懲役2年 4年間執行猶予」との有罪判決を受けても,そのことがAさんの運転免許に影響は与えることはありません。したがって,Aさんは,執行猶予中でも(免許がある限り種別は問わない)を運転することができます。

~ 執行猶予期間中に気を付けるべきこと ~

ただし,刑を言い渡した裁判官からも説明があったと思いますが,自動車の運転も含めて日常生活には気を付ける必要があります。それは,執行猶予は取り消されることがあり,取り消されると,執行猶予を言渡された刑について服役する必要が出てくるからです。では,刑法は,どのような場合に執行猶予が取消されると規定しているのでしょうか?刑法は「必要的取消し」の場合と「任意的取消し」の場合とを規定しています。

= 必要的取消し =

必要的取消しとは,刑法26条各号に規定される「事由」に当てはまった場合に必ず執行猶予が取消されることをいいます。代表的な事由として,刑法26条1号に

執行猶予期間中にさらに罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ,その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき

と規定されています。

= 任意的取消し =

任意的取消しとは,刑法26条の2各号に規定される「事由」に当てはまる場合でも,執行猶予を取り消すかどうかは裁判官の判断に委ねられることをいいます。代表的な事由として,刑法26条の2第1号に

猶予の期間内に更に罪を犯し,罰金に処せられたとき

と規定されています。

~ 車の運転でも禁錮以上の実刑,罰金刑は有り得る ~

禁錮以上の刑に処せられれば「必要的取消し」,罰金刑に処せられれば「任意的取消し」に当たるということですから,運転する際も,これらの罪に該当するような行為をすることは絶対にやめましょう。酒気帯び運転,酒酔い運転,無免許運転などの故意犯の他,過失運転致死傷罪などの過失犯でも「必要的取消し」「任意的取消し」事由に当たることがあります。日頃の運転は十分注意すべきです。

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