1.「上告」について
裁判所・裁判官の判断については、不服を申し立てて再度検討をし直してもらう制度があります。
このうち、上級の裁判所に対して不服申立をする制度を「上訴」といい、控訴審の判決に対する上訴が「上告」です。
そして、上告審は法律違反の有無のみを審理する「法律審」です。
そして、最高裁判所で公判が行われることは原則としてありません。
ほとんどの事件は、書面のみにより審理され、決定により裁判がなされるからです。
しかし審理の結果、原判決を変更しなければならない可能性が生じた場合は、被告人に反論の機会を与えるために公判が開かれます。
また、死刑判決に対する上告については、慣例として公判を開くこととなっています。
上告ができるのは、原則として、①憲法違反、憲法解釈の誤り、判例違反のいずれかがある場合に限られています。
しかし、これらの事由がなくても、②法令解釈に関する重要な事項を含む事件については、最高裁判所が裁量で上告を受理(例外的な事件受理)することができます。
また、③一定の事由があり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、最高裁判所の職権で破棄判決をすることができます。
以下では上告理由について説明します。
2.上告理由
(1)上告理由は、原判決に「憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤りがあること」「判例と相反する判断をしたこと」に限られます。なお、これらが原審で主張されていなければ、上告できません。
もっとも、最高裁は、上告理由がなくても、控訴理由と同様の理由(下記①~⑤)があり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができることになっています。
これを「裁量上告」といいます。
- 判決に影響を及ぼすべき法令違反があること
- 刑の量定が甚だしく不当であること
- 判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認があること
- 再審事由があること
- 判決があった後に刑の廃止・変更又は大赦があったこと
これらの事由は、上告の理由となるものではなく、あくまで上告審である最高裁判所が、原判決を裁量によって棄却できる場合に過ぎません。
実際に、事実誤認や量刑不当を主張して、職権発動を求める上告の例が多くみられます。
(2)例外的な事件受理
法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、最高裁判所が上告事件として受理することができると規定されています(刑訴法406条)。
法令解釈に関する上告理由を判例違反に限ることによって、最高裁判所の事件負担を避ける一方で、問題となる法令解釈について判例がない場合や、判例があるがこれを変更する必要があるような場合には最高裁の裁量によって最高裁の管轄とすることにしています。
上訴権者によるかかる申し立てを「上告受理の申立て」と呼びます。
3.上告手続きの概要と判断までの期間
上告の提起期間は14日であり、上告申立人は指定された期間(通知が届いてから28日以上の定められた期間)内に上告趣意書を提出しなければなりません。
通常、判決・決定で終了する事件のうち98%から99%程度について、上告棄却決定が下されており、判決・決定で終了する事件のうち80%程度の事件が3か月以内に終了し、平均審理期間は4か月未満です。
4.上告審の裁判の種類について
(1)上告棄却の決定
上告申し立てが方式に違反していたり、上告期間経過後にされた場合には、上告申立が棄却されます。
棄却決定の大半を占めています。
(2)上告棄却の判決
上告趣意書において、法定の上告理由に当たる事由の主張がなされていても、上告理由のないことが明らかであると認められる場合には、判決で上告が棄却されます。
(3)原判決破棄の判決
上告理由がある場合は、
- 判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合
- 判例を変更して原判決を維持するのを相当とする場合
を除いて判決で原判決を破棄します。
5.上告審の弁護活動
(1)上告趣意書の作成
この上告理由は、上告趣意書に記載することになります。
上告趣意書の記載内容によって上告の結果が変わります。
(2)身体拘束解放活動
上告審に至るまでの非常に長期にわたる身体拘束を受けている方のためにも、事案に応じた適切な身柄解放活動を行います。
上告審は妥当な判決を求める最後のチャンスです!
たしかに上告が認められるのはハードルが高いですが、充実した弁護活動により、判決の破棄・変更を得られる可能性は高まるといえます。
上告について悩まれている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。
刑事事件を専門に取り扱う弁護士が、直接「無料相談」を行います。
被疑者が逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています。