テレビのニュースや新聞、ネットニュースなどで『不起訴』という言葉をよく目にしますが、『不起訴』について詳しく分からない方も多いかと思います。
そこで本日より二日間にわたって、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部の弁護士が『不起訴』について解説します。
参考事例
会社員のAさんは、3カ月前に電車内で痴漢事件を起こして福岡県西警察署で取調べを受けました。
警察署での取調べを終えてたAさんは、先日、福岡地方検察庁の検察官から呼び出しがあり、検察庁に行きました。
そして検察庁でも検察官の取調べを受けましたが、そこでAさんは、検察官から「今回の事件は不起訴にするので、今後は気を付けてください。」と言われました。
初めて刑事事件を起こしたAさんは「不起訴」の意味がよく分かりません。
(フィクションです)
不起訴
不起訴とは、刑事手続きにおいて、検察官が決定する終局処分(その事件について起訴・不起訴を終局的に決める処分)の一種で、その意味は文字通り、起訴されないということです。
誰が決めるの?
不起訴処分は、検察官が決定する終局処分の一種ですから、不起訴処分を決めるは警察官でもなければ、裁判官でもなく「検察官」です。
検察官の元には、警察や検察の捜査で収集した証拠が全て届けられます。
その証拠の中には、被疑者(犯人)にとって不利な証拠もあれば、有利な証拠も含まれています。
したがって、検察官は、それらの証拠を総合的に判断して、事件を起訴するか、不起訴処分にするか判断できる立場にあるのです。
~法的根拠~
●刑事訴訟法第247条(国家訴追主義)
公訴は、検察官がこれを行う。
●刑事訴訟法第248条(起訴裁量(便宜)主義)
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴をしないことができる。
いつ決めるの?
起訴するか、不起訴にするかの判断は、上記~法的根拠~のとおり検察官に委ねられていますが、その決定する時期については明確な決まりがあるものではなく、検察官の裁量に一任されています。
検察官は、捜査の過程で収集した証拠に基づいて終局処分を決めますし、証拠の収集には一定程度時間を要しますから、終局処分の判断までにも一定の時間を要します。
ただし、身柄事件の場合は時間的制約がありますから、在宅事件に比べて証拠収集のスピードがあがり、その分、終局処分を下す時期も早くなります。
不起訴処分の基準は?
検察官が収集した証拠に基づき判断します。
そして、検察官は、起訴するだけの証拠が集まったか否かを見極めます。
証拠が集まっていないと判断した場合、あるいは集まっているが、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況から起訴を必要としないとき(刑事訴訟法248条)は不起訴とします。
~明日のコラムに続く~