覚醒剤を共同使用し、容態が悪化した知人を放置したとして、保護責任者遺棄罪で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。
事件概要
覚醒剤を共同使用していたところ、容態が悪化した知人男性V(28歳)に対し適切な措置を怠り放置したとして、福岡市中央区在住の会社員男性A(32歳)が保護責任者遺棄罪の容疑で逮捕されました。
福岡県警中央警察署の調べによると、Aは、Aの自宅で覚醒剤を共同使用していたVの容態が悪化したにもかかわらず4時間ほど放置し、その後消防に通報しましたが、救急隊が駆け付けたときにはVの意識はなく、その後くも膜下出血で死亡が確認されたとのことです。
警察の調べに対し、Aは保護責任者遺棄罪の認否を明らかにしていません。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)
保護責任者遺棄罪とは
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者が、これらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する、と定めています(刑法第218条)。
保護責任者遺棄罪は、ある場所から別の場所へ運ぶという作為的な行為(移置)のみならず、置き去りや不保護といった不作為をも処罰対象とする犯罪のため、犯罪の成立には、「保護する責任」(作為義務)を有する者であることが求められます。
「保護する責任のある者」とは、子どもの親権者や老人ホームの介護職員など、法令や契約により義務を負う者のみならず、人気のない道路で倒れている他人を介抱した通行人や、飲み会で泥酔した人と同席の友人など、善意で引き受けた場合や社会通念上相当な場合(条理)に保護義務が生じることもあります。
本件のような薬物の共同使用の場合、元男性俳優が、MDMAを共同使用して薬物中毒で意識不明になった女性への適切な処置を怠ったとして保護責任者遺棄罪で有罪となった例があるなど、状況次第で、条理により「保護する責任のある者」と認定されることがあります。
本件で、例えば、当時Aの自宅にAとV以外の者がおらず、容態の悪化したVの保護はAが行うほかない状況だったとすれば、Aは「保護する責任のある者」と認定され得ます。
その場合、容態が悪化した「病者」のVを、「保護する責任のある者」であるAが4時間ほど放置したことは、「遺棄した」(置き去り)又は「生存に必要な保護をしなかった」ものとして、保護責任者遺棄罪が成立する可能性が高いです。
なお、逮捕時点での容疑は保護責任者遺棄罪ですが、今後の捜査で、Aが適切な措置をしていればVが死亡しなかった疑いが強まれば、被疑罪名が保護責任者遺棄致死罪、AがVへの殺意を持って放置した疑いが強まれば被疑罪名が殺人罪、となる可能性もあります。
覚醒剤共同使用による保護責任者遺棄罪の刑事弁護
保護責任者遺棄罪でも懲役刑しかない重い罪でありますが、保護責任者遺棄致死罪で有罪になると、3年以上20年以下の懲役が科せられる可能性があります。
本件では、Aは保護責任者遺棄罪の認否を明らかにしていないとのことですが、早めに弁護士と接見し、事件の見通しや取調べ対応などについて法的な助言を得ることが重要です。
また、被害者対応や覚醒剤取締法違反(使用)容疑への対応など、行うべき弁護活動が多岐にわたるため、刑事事件に強い弁護士に依頼し、適切な弁護活動を早く開始してもらうことをお勧めします。
福岡県の刑事事件に関するご相談は
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件に強く、保護責任者遺棄罪や薬物事件の弁護活動の実績が多数あります。
覚醒剤共同使用による保護責任者遺棄罪でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。