【事件解説】支払い念書への署名 強要罪で逮捕

 客を脅して支払い念書に署名させたとして、飲食店店主が強要罪で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

事件概要

 福岡市中央区中洲の飲食店で、客Vを脅して支払い義務があることを認める念書に署名させたとして、店主の男性Aが強要罪の容疑で逮捕されました。
 福岡県中央警察署の調べによると、Vは「1時間5千円」と説明されて入店したところ、会計時にAから20万円を請求された上、「期日までに支払わなかった場合は親族に一括で請求されることを許します」などと書かれた念書に署名させられた、とのことです。Aは強要の容疑を認めています。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)

強要罪とは

 相手方又はその親族の、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせた者は、3年以下の懲役に処する、と定められています(刑法第223条)。

 「脅迫」とは、一般人に恐怖心を抱かせる程度の害悪の告知、とされます。
 なお、「害悪の告知」の対象は、「相手方又はその親族の、生命、身体、自由、名誉若しくは財産」とされているため、親族ではない恋人や友人等に対して害を加えることを告知する場合は、強要罪は成立しないと考えられます。

 「義務のないこと」とは、法律上又は社会通念上なすべきとされていないことを指すと考えられています。
 義務のないこと強要する具体的な例として、謝罪や土下座の強要があげられることが多いですが、その他にも、性的な写真を拡散するなどと脅迫して、性行為や面会を強要して逮捕されたなどの事件報道が見受けられます。

 本件で、V本人に対する脅迫において、いかなる内容の「害悪の告知」あったかは定かでありませんが、少なくとも「期日までに支払わなかった場合は親族に一括で請求されることを許します」という念書については、その記載内容自体が「親族の財産に対する害悪の告知」であり、脅迫にあたると考えられます。

 また、本件の状況からは可能性は低いと思われますが、仮にVがAに20万円を支払う民事上の法的義務が発生するとしても、親族への請求を承諾する旨の念書に署名する法的義務や社会通念上の義務は通常発生しないと考えられます。

 よって、Aは、Vの「親族の財産に対する害悪を告知」して脅迫し、Vに念書の署名という「義務のないことを行わせた」として、強要罪が成立する可能性があります。

強要事件の刑事弁護

 脅迫罪と異なり、強要罪の場合、法定刑は懲役刑のみであるため、起訴されると通常、公開の法廷での正式な裁判となります。
 そのため、不起訴処分の獲得を目指して、早期に被害者に対する謝罪や被害弁償を行った上、示談成立に向けた交渉を行うことが重要です。

 本件のような強要事件の場合、被害者は加害者に強い嫌悪感や恐怖感などを抱くことが通常であり、被害者の連絡先を教えてもらい示談交渉を直接行うことは困難です。
 弁護士であれば、被害者も話を聞いてもよいとなることも多く示談交渉の余地が生まれ、刑事事件に強く示談交渉の経験豊富な弁護士であれば、双方十分に納得のいく示談がまとまる可能性が見込まれ、不起訴処分で事件が終了する可能性を高めることができます。

福岡県の刑事事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は刑事事件に強く、強要などの暴力事件において、示談成立などによる不起訴処分を獲得した実績が多数あります。
 強要罪でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部にご相談ください。

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