抵当権契約締結後に背任罪

2019-11-07

抵当権契約締結後に背任罪

抵当権契約締結後の背任罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

北九州市戸畑区に住むAさんは、借入金3000万円の担保として、銀行Vとの間に自己所有の土地や建物(以下、本件土地、建物といいます)につき抵当権を設定する契約を結びました。ところが、Aさんは、本件土地、建物を高く買い取ってくれる業者を見つけ、その業者のために本件土地、建物を6000万円で売却し、当該取引を原因とする所有権移転登記を完了しました。ところが、Aさんは、この事実を知った銀行Vから背任罪で福岡県戸畑警察署に告訴状を提出され、逮捕されてしまいました。Aさんの家族は、Aさんとの接見を弁護士に依頼しました。
(フィクションです)

~ 抵当権とは ~

抵当権とは、お金を貸す際に、土地や建物に設定する権利です。
債務者(お金を借りた人=Aさん)が予定どおりお金を返すことができなくなった場合に備える(担保とする)権利です。
この場合、債権者(お金を貸した人=V銀行)を「抵当権者」、債務者を「抵当権設定権者」といいます。
抵当権設定権者は、抵当権契約締結後、抵当権者のために抵当権設定の登記手続を完了しなければなりません(通常は、司法書士などに任せることが多いかと思います)。

本件は、抵当権設定権者であるAさんが、V銀行のための抵当権設定を完了する前に、その権利の対象となっていた土地、建物を処分したという事案です。

~ 背任罪 ~

背任罪は刑法247条に規定されています。

刑法247条
 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

「他人のために事務」とは、

・委任、雇用、寄託、請負などの契約により他人の財産の管理・保全の任務を行うなどのように、他人の財産の管理に関する事務の全部又は一部を他人のために代行するような場合
・登記協力義務のように、売却・担保物件の設定など自己の財産的処分行為を完成させるための自己の事務であると同時に、その協力なくしては相手方の財産保全が完成しない場合

などがこれに当たります。

「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」とは「図利加害目的」とも呼ばれます。
「利益」とは、必ずしも財産的利益に限る必要はなく、
・自己の信用・面目を保持する目的
・不良貸付の発覚を免れる目的
など、身分上の利益その他すべて自己の利益も含まれると解されています。実務上は、自己又は第三者の利益を図る目的があるようにみえて、他面で本人の利益を図る目的があるのでは?という場面もすくなくありません。そんな場合は、目的の主従、すなわち、どちらの目的により重点が置かれているのか、という観点から判断されます。

「任務に背く行為(任務違背行為)」とは、他人の事務の処理者として当然になすべきと法的に期待される行為をしないことをいい、期待される行為をしない場合と、なすべきでない行為をする場合の両方があります。何がその事情下において法的に期待される行為といえるかは、法令、契約、信義則等を考慮の上、当該事務の性質、内容、行為時の諸般の事情等を総合考慮して判断されることとなります。

「財産上の損害」の「損害」は既存の財産が減少した場合(積極的損害)のみならず、得べかりし利益が得られなかった場合(消極的損害)も含まれます。判例によれば、財産の減少は、経済的見地から判断されることになります(昭和58年5月24日)。たとえば、金融機関の役職員が、返済の可能性が著しく低い人に無担保で貸付を行ったとします。法的にみれば、貸主は、返済の可能性が低いとしても貸金債権(お金を返してくれといえる権利)を有しているため、損害は生じていないとも思えます。しかし、経済的見地から見ると、返済の可能性が著しく低い人に無担保で貸付を行えば、事実上、貸金の回収をできる見込みがないので、財産上の損害が生じていると考えていくことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。

ページの上部へ戻る