【覚せい剤】密輸で無罪判決

2020-02-27

【覚せい剤】密輸で無罪判決

覚せい剤密輸無罪判決について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡市中央区に住む中国国籍のAさんは、知人から「金塊が送られてくるから受け取ってもらえないか」と言われました。Aさんは金塊の密輸はいけないことではないかと思い、スマートフォンで金塊の密輸に関して検索を繰り返しました。しかし、Aさんは知人から多額の報酬を約束されたことから、依頼を引き受けました。そして、Aさんは国際スピード郵便で荷物を受け取ったところ、福岡県中央警察署に覚せい剤取締法違反(営利目的輸入罪)、関税法違反(無許可輸入罪)で逮捕、起訴されてしまいました。荷物の中身は金塊ではなく覚せい剤(約1.4キロ)だったのです。Aさんは裁判で、「荷物は金塊だと思っていた」などと一貫して覚せい剤輸入の故意を否認していたところ、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入罪)については無罪判決の言い渡しを受けました。
(事実を基に作成したフィクションです。)

~はじめに~

上記事例は、昨年12月19日、福岡地方裁判所において、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入罪)、関税法違反(無許可輸入罪)に問われた中国国籍の男性に対し、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入罪)について無罪判決が言い渡された事例をモデルに作成しています。なお、関税法違反(無許可輸入罪)については有罪判決を受け、懲役1年6月、執行猶予3年(求刑:懲役10年、罰金400万年)が言い渡されています。

~覚せい剤取締法(営利目的輸入の罪)~

覚せい剤の営利目的輸入の罪は,覚せい剤取締法41条2項に規定されています。

41条2項 
営利の目的で前項の罪を犯した者は,無期若しくは3年以上の懲役に処し,又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金に処する。

「営利の目的」とは,犯人が自ら財産上の利益を得,又は第三者に得させることを動機,目的とする場合をいいます。
営利目的の存否は,犯人の主観にかかわるものですから,これを裏付ける証拠は犯人の自白しかありません。そこで,自白がない場合は,覚せい剤の数量,価格,犯行の手口,態様のほか,犯人が犯罪行為に高額の資金を出捐していること,犯人が犯罪行為を近接した時期に同種薬物を販売していた事実があること,小分け道具等の薬物の密売に用いられる器具等を所持していたことなどの間接証拠(情況)を総合的に勘案して判断されるものと思われます。
「前項」とは41条1項のことをいいます。同項は,覚せい剤の輸入,輸出,製造の罪を定めた規定です。
覚せい剤の営利目的輸入罪は無期懲役刑が設けられている大変重たい罪です。

~なぜ無罪となったのか?~

刑事訴訟法336条は

①被告事件が罪とならないとき
②被告事件について犯罪の証明がないとき

無罪判決を言い渡す、としています。
そして、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入罪)において証明すべき事項は

ア、覚せい剤を輸入したこと(客観的事実)
イ、輸入したものが覚せい剤であると認識していたこと(主観的事実=故意)

の2点です。
この点、本件ではアについては争いがないようですが、イについて争いがあるようです。
そして、裁判の詳細は分かりませんが、報道によれば、裁判官は

Aさんが携帯電話で金塊に関する密輸の検索を繰り返す一方、覚せい剤の密輸に関する検索履歴がないこと

を指摘し、

Aさんに覚せい剤を含む違法薬物の認識があったとまでは認められない

としたようです。
そうすると、イに関する立証がなされたことになりませんから、結局無罪判決が言い渡されたというわけです。

~関税法違反はなぜ有罪?~

金塊の無許可輸入罪は、関税法111条1項1号に規定されています。

第111条 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第67条(輸出又は輸入の許可)(第7条において準用する場合を含む。次号及び次項において同じ。)の許可を受けるべき貨物について当該許可を受けないで当該貨物を輸出(本邦から外国に向けて行う外国貨物(仮に陸揚げされた貨物を除く。)の積戻しを含む。次号及び次項において同じ。)し、又は輸入した者

また、覚せい剤などの禁制品輸入罪も関税法に規定されています(罰則:10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又は併科)。

Aさんは覚せい剤を金塊と誤信して輸入したわけですが、いずれも「輸入してはならない」、という規範に直面している状況は同様です。
よって、この場合、輸入罪の故意に欠けることはなく、Aさんは無許可輸入罪の範囲で処罰されることになります。

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